【2021年度最新版】FIT制度と2022年4月から始まるFIP制度を分かりやすく解説

2020年08月03日

日本でFIT制度が開始してもうすぐ10年が経とうとしています。そもそもFIT制度とは何か、そして来年4月から開始されるFIP制度について分かりやすくご紹介します。


【目次】



FIT制度とFIP制度とは


■FIT制度

■FIP制度


FIT制度・FIP制度導入の背景


■日本のエネルギー自給率


■再生可能エネルギーの普及促進


■FIP制度の導入


再生可能エネルギー発電促進賦課金について



■再エネ賦課金の課題と政府の対策

まとめ



※この記事は、2020年8月3日に公開した記事ですが、文言やデータ、その他の部分も追記‧更新して2021年7月30日・2021年10月29日に再度公開しました。

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FIT制度とFIP制度とは


■FIT制度

FIT制度とは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tariff)のことを指します。一般家庭や事業者が再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が買い取ることを国が約束する制度です。
国内での再生可能エネルギーによる発電の普及を目的としており、日本では「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」に基づき2012年7月に開始しました。
発電方法や電力量によって定められた期間中は、単価を変えることなく電力会社が買い取ることが義務付けられています。

2021年度の買取価格1kWhあたりの調達価格等は下記の通りです。
※FIT制度(太陽光10kW未満及び入札制度適用区分を除く)は税を加えた額が調達価格
FIT制度の太陽光10kW未満は調達価格
FIP制度(入札制度適用区分を除く)は基準価格
入札制度適用区分は上限価格

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※1 自家消費型の地域活用要件あり。ただし、営農型太陽光発電は、3年を超えるの農地転用許可が認められ得る案件は、自家消費を行わない案件であっても、災害時の活用が可能であればFIT制度の認定対象とする。
※2 2019年度は出力制御対応機器設置義務なしの場合24円、義務ありの場合26円。

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※新規燃料については、食料競合について調達価格等算定委員会とは別の場において専門的・技術的な検討を行った上で、その判断のための基準を策定し、当該基準に照らして、食料競合への懸念が認められる燃料については、そのおそれがないことが確認されるまでの間は、FIT制度の対象としない。食料競合への懸念が認められない燃料については、ライフサイクルGHG排出量の論点を調達価格等算定委員会とは別の場において専門的・技術的な検討を継続した上で、ライフサイクルGHG排出量を含めた持続可能性基準を満たしたものは、FIT制度の 対象とする。なお、既に買取りの対象となっている燃料についても、本委員会とは別の場において、ライフサイクルGHG排出量の論点について専門的・技術的な検討を行う。主産物・副産物を原料とするメタン発酵バイオガス発電については、一般木材等の区分において取り扱う。石炭(ごみ処理焼却施設で混焼されるコークス以外)との混焼を行うものは、2019年度(廃棄物その他バイオマスは2021年度)からFIT制度の新規認定対象とならない。また、2018年度以前(廃棄物その他バイオマスは2020年度以前)に既に認定を受けた案件が容量市場の適用を受ける場合はFIT制度の対象から外す。

(出典:「固定価格買取制度」 制度の概要|資源エネルギー庁)

(出典:「固定価格買取制度」|資源エネルギー庁)

■FIP制度

FIP制度とは「フィードインプレミアム(Feed in Premium)」の略称で、発電事業者が再生可能エネルギーで発電した電力を卸電力取引市場で自由に売電させ、そこで得られる売電収入に「あらかじめ定める売電収入の基準となる価格(FIP価格)と市場価格に基づく価格(参照価格)の差額(=プレミアム)×売電量」の金額を上乗せして交付する制度です。FIT制度のように、固定価格で買い取るのではなく、再エネ発電事業者が卸市場などで売電したとき、その売電価格に対して一定の補助額(プレミアム)を上乗せすることで、再エネ導入を促進します。
プレミアム分は電気使用者から徴収する賦課金で賄われますが、FIT制度と比べると比較的少ない金額に抑えることができます。さらに、参照価格は一定期間(1ヶ月~1年程度)毎に変更することで、事業者の投資予見性確保と、市場価格を意識した発電行動促進の両立が実現できるとしています。

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FIP制度の市場価格に基づく「参照価格」とは、
① 「卸電力市場」の価格に連動して算定された価格 +
② 「非化石価値取引市場」の価格に連動して算定された価格 -
③ バランシングコスト
によって決まります。

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また、非化石価値取引市場の「非化石」とは、石油や石炭などをはじめとする化石燃料を使っていない「非化石電源」で発電された電気が持つ「環境価値」の一種です。
再エネ電気にも、この「非化石価値」があるため、再エネ電気の市場取引での収入は、
① 卸電力市場で電気を売って得た収益 +
② 非化石価値取引市場での収益
となります。

そして、バランシングコストの「バランシング」とは、再エネ発電事業者に求められる「発電する再エネ電気の見込みである“計画値”をつくり、実際の“実績値”と一致させること」です。
バランシングにあたり、計画値と実績値の差(インバランス)が出た場合には、再エネ発電事業者は、その差を埋めるための費用を払わなければなりません。これは、FIT制度では、再エネ発電事業者には免除されています。

「バランシングコスト」については、経過措置として太陽光・風力発電において2022年度の開始当初はkWhあたり1.0円を交付し、翌年度からは少しずつ金額を減らしていくこととなっています。

(出典:資源エネルギー庁 再エネ特措法改正関連情報)

(出典:経済産業省 電源の特性に応じた制度構築)

(出典:再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会中間取りまとめ )

(出典:再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート)

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FIT制度・FIP制度導入の背景


では、FIT制度と、その後導入することが決まったFIP制度にはどんな背景があるのでしょうか。
ここでは「日本のエネルギー自給率」と「再生可能エネルギーの普及」をキーワードにご説明します。

■日本のエネルギー自給率


FIT制度導入の背景には、日本のエネルギー自給率が低いことがあります。2018年の日本のエネルギー自給率は11.8%、OECD諸国中34位という低水準となっています。

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日本は主なエネルギー源である石油、石炭、天然ガス(LNG)の調達に関して、そのほとんどを輸入に頼っており、石油の輸入に至っては、中東地域の国からの輸入が9割以上を占めています。発電資源を他国に依存するということは反面、資源調達に国際情勢が影響してしまう恐れがあり、安定した電力の供給に懸念が生じてしまうという課題を抱えています。

(出典:日本のエネルギー2020年度版「エネルギーの今を知る10の質問」|資源エネルギー庁)
(出典:石油統計速報|経済産業省)

■再生可能エネルギーの普及促進


そこで注目されているのが、再生可能エネルギー による発電です。エネルギー自給率の向上には、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーを使用した発電の普及が効果的とされています。また、化石燃料による発電と比べると二酸化炭素の排出量が少ないのも再生可能エネルギーの特徴です。
東日本大震災以前の政府の計画では、2030年時点での総電力に占める割合を原子力は50%以上、再生可能エネルギーは20%を目指すとしていました。しかし、震災後計画は見直され、2018年7月に発表された「第5次エネルギー基本計画」では、2030年には再生可能エネルギーの比率として22~24%を目指すこととなっています。
また、政府は、温暖化対策に関する国際的な枠組み「パリ協定」で目標として掲げられた「脱炭素化 」に向け2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」の実現も目標として掲げており、再生可能エネルギーによる発電は今後重要なトピックになるでしょう。

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しかし、注目される一方で課題もあります。再生可能エネルギーによる発電は発電設備の建設や維持に多くのコストがかかります。たとえば非住宅太陽光発電のシステム費用は、欧州の約2倍と高コストです。
そこで政府が導入したのがFIT制度です。FIT制度によって長期的な収益を約束したことで、一般家庭や事業者が再生可能エネルギーによる発電に参画しやすくなりました。
2012年7月にFIT制度が開始して以降再生可能エネルギーの設備容量は急速に増えており、制度導入の効果が表れています。

(kW) 導入水準(2019年9月) FIT前導入量+FIT認定量
(2019年9月)
ミックス
(2030年度)
ミックスに対する
導入進捗率
太陽光 5,240万 7,760万 6,400万 約82%
風力 390万 990万 1,000万 約39%
地熱 59万 62万 140~155万 約40%
中小水力 980万 990万 1,090~1,170万 約86%
バイオマス 420万 1,080万 602~728万 約60%

※バイオマスはバイオマス比率考慮後出力
※改正FIT法による失効分(2019年9月時点で確認できているもの)を反映済み
※地熱・中小水力・バイオマスの「ミックスに対する進捗率」はミックスで示された値の中間地に対する導入量の進捗

■FIP制度の導入


FIT制度の導入は再エネを急速に拡大させる一つのきっかけとなりました。
しかし一方で、FIT制度の導入により、この後ご紹介する「賦課金」や、先にご紹介した通り電力の需給バランス(バランシング)を考慮する必要のないFIT電源が増えてきたことによる需給調整上の課題が出てきました。こうした課題の解決に寄与し、再エネを電力市場へ統合するにあたっての段階的な措置として導入することが決まったのが「FIP制度」です。

FIP制度は来年4月から開始されます。その際、太陽光や中小水力など電源の種別によって、一定規模以上については、新規認定でFIP制度のみが認められます。このほか、新規認定でFIT制度が認められる対象についても、50kW以上は事業者が希望する場合、FIP制度による新規認定を選択できます。また、すでにFIT認定を受けている電源についても、50kW以上は事業者が希望する場合、FIP制度に移行が可能です。
このように、今後はFIT制度とFIP制度の2つが併存することになります。

(出典:電源種別(太陽光・風力)のコスト動向等について|資源エネルギー庁)
(出典:再生可能エネルギー 固定価格買取制度ガイドブック 2020年度版|資源エネルギー庁)
(出典:再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート)

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再生可能エネルギー発電促進賦課金について


電力会社が再生可能エネルギーを買い取るための費用は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(以下再エネ賦課金)として、電気の使用者が支払う電気料金に含まれています。
使用した電力量によって金額は変動しますが、単価は全国一律で、国が1年ごとに算定します。

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(出典:ニュースリリース |経済産業省)

■再エネ賦課金の課題と政府の対策

再生可能エネルギーによる発電の普及が進むにつれて電力の買い取りも増加し、再エネ賦課金を支払う電気使用者の負担が大きくなっていることが現在課題となっています。
また、FIT制度の開始以降急速に普及した太陽光発電に関しては、高い調達価格の権利を確保しているにも関わらず運転が開始されない未稼働案件の増加も見られます。これらが後々動き出すと、その時点から20年間はFIT制度にて買い取りが行われるため、再エネ賦課金を支払う電気使用者の更なる負担が予想され、懸念の声が上がっています。

そこで政府は、2017年4月に「再生可能エネルギー特別措置法の一部を改正する法律(改正FIT法)」を施行しました。再生可能エネルギーの最大限導入と電気使用者の負担抑制の両立を図るため、FIT制度の見直し等を行うものです。
改正FIT法では以下の内容が定められています。

▼新認定制度の創設について 再生可能エネルギー発電事業者の事業計画について、その実施可能性(系統接続の確保等)や内容等を確認し、適切な事業実施が見込まれる場合に経済産業大臣が認定を行う制度を創設します。

▼買取価格の決定方法の見直しについて
調達価格の決定について、電源の特性などに応じた方式をとることができるようにするため、電気の使用者の負担の軽減を図る上で有効である場合には、入札を実施して買取価格を決定することができる仕組みを導入します。
また、開発期間に長期を要する電源などについては、あらかじめ、複数年にわたる調達価格を定めることを可能とします。

(出典:北海道経済産業局 再生可能エネルギー |経済産業省)

改正FIT法によって発電事業者の事業の適切性や実現可能性がチェックされるようになり、責任ある発電事業者の認定・未稼働案件の抑制が期待されます。また、入札制度を設けることで発電事業者間での競争が生じ、コストの安い発電事業者が優先されます。買取費用が抑えられれば、結果的には再エネ賦課金の総額の減少につながります 。

■再エネ特措法の改正と新たに創設されるFIP制度


更に政府は、2022年4月より再エネ特措法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)を一部改正することを決めました。これにより、既存のFIT制度に加えて新たにFIP制度(Feed in Premium)が創設されることとなります。

FIP制度とは、発電事業者が再生可能エネルギーで発電した電力を卸電力取引市場で自由に売電させ、そこで得られる売電収入に「あらかじめ定める売電収入の基準となる価格(FIP価格)と市場価格に基づく価格(参照価格)の差額(=プレミアム)×売電量」の金額を上乗せして交付する制度です。プレミアム分は電気使用者から徴収する賦課金で賄われますが、FIT制度と比べると比較的少ない金額に抑えることができます。さらに、参照価格は一定期間(1ヶ月~1年程度)毎に変更することで、事業者の投資予見性確保と、市場価格を意識した発電行動促進の両立が実現できるとしています。

(出典:資源エネルギー庁 再エネ特措法改正関連情報)

(出典:経済産業省 電源の特性に応じた制度構築)

(出典:再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会
中間取りまとめ )


まとめ


FIT制度とは何か、またFIT制度導入の背景に、新たに創設されるFIP制度ついてご紹介しました。FIT制度及びFIP制度の活用が進み、各企業の脱炭素の取り組みが一層進むことを期待します。また、FIT制度に基づく買取が終了した設備やその後の活用方法などを紹介した“卒FIT”の記事もございます。
是非ご覧ください。

“卒FIT”について詳しくはこちら
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