核融合発電とは? 次世代エネルギーとしての可能性とメリット・デメリットについて解説

ビジネス関連
2025年6月11日

核融合発電は次世代エネルギーとして期待される新たな技術で、2030年代の発電実証を目指して日本国内でも実用化に向けた研究が進められています。核融合発電の可能性と、メリット・デメリットなどについて解説します。

目次

核融合発電とは

核融合発電の仕組みとは

核融合発電は、原子核同士が融合することによって生み出される膨大なエネルギーを、発電に利用するものです。原子は身の回りにある全てのものを構成している物質で、体や食べ物、空気、水などは原子の結びつきによって作られています。原子は原子核とその周りを動く電子からできていて、原子核は陽子と中性子からできています。

核融合は、水素のような軽い原子の原子核を高い温度でぶつけて、少し重たいヘリウムのような原子核に変えることを指します。これは、太陽の内部で起きている現象と同じです。太陽では70%を構成している水素が圧縮されて高気圧になり、温度が上昇することで、中心部分で水素の原子がヘリウムの原子に変換されています。この反応が起きることで膨大なエネルギーが生み出されて、高熱や光を放出しています。

核融合発電では、太陽の内部で起きている核融合と同じ反応を人工的に作り出して、発電を行います。燃料は海水に含まれる重水素とリチウムです。3リットルの水に含まれる重水素0.1グラムと、スマートフォンの電池3分の1個分に含まれるリチウム0.3グラムで、日本人1人あたりの年間電気使用量7500kWhの発電ができるといわれています。

核融合発電と原子力発電の違いとは

軽い原子核同士の融合によって生まれるエネルギーを発電に利用する核融合発電に対して、重たい原子核を分裂させる核分裂のエネルギーを利用して発電するのが原子力発電です。核融合発電が次世代エネルギーとして期待されているのに対して、原子力発電はすでに実用化されています。

四国電力伊方発電所(愛媛県)

原子力発電では、原子炉の中で燃料のウランを核分裂させます。核分裂の際に発生する熱エネルギーを使って水を蒸気に変えて、この蒸気でタービンを回すことによって、発電機で電気を作っています。

原子力発電の燃料になる天然のウランには、核分裂しやすい約0.7%のウラン235と、核分裂しにくいウラン238が含まれます。ウラン235の原子核に中性子が当たると原子核が分裂して、膨大な熱エネルギーと中性子が発生します。この中性子が別のウラン235を核分裂させる連鎖反応が起きている状態が臨界です。

原子力発電は実用化されている一方で、課題もあります。それは発電の過程で放射性廃棄物が排出されることです。放射性廃棄物は地上で管理することは難しく、地下深くに貯蔵する必要があります。日本国内では最終処分地の検討を進めているものの、現状では決まっていません。

核融合発電の実用化に注目が集まっている背景は

核融合発電については実用化に向けた研究が進められていて、世界各国で注目を集めています。大きな理由は、燃料となる重水素は海水から取り出すことができるので、燃料を安定的に供給できるからです。

研究自体はアメリカ、旧ソ連、ヨーロッパの国々、それに日本でも以前から行われてきたものの、技術的に困難で、なかなか進んでいませんでした。それが、1985年にスイス・ジュネーブで開かれた米ソ首脳会談をきっかけに、核融合実用化のための国際協力が始まりました。

現在では、核融合実験炉の実現を目指した超大型国際プロジェクトが進められています。このプロジェクトがITER(国際熱核融合実験炉)計画で、日本、欧州連合(EU)、アメリカ、ロシア、韓国、中国などが参加しています。フランスのサン・ポール・レ・デュランスに人類初のITERを建設中です。

建設中のITER(2021年8月)

核融合発電のメリットとデメリット

核融合発電のメリットとは

核融合発電にはさまざまなメリットがあると考えられています。1つは前述の通り、燃料を海水から取り出すことができることから、燃料が豊富にあると同時に、安定供給が可能になることです。

もう1つの大きなメリットは、二酸化炭素などの温室効果ガスが発生しないことです。核融合発電は重水素と三重水素を核融合させることでエネルギーを生み出すため、発電の過程で温室効果ガスが発生しないクリーンな発電方法となっています。

核融合発電の安全面でのメリットとは

安全面でもメリットがあります。1つは、原子力発電で排出されるような、高レベルの放射性廃棄物がほとんど出ないことです。核融合の際に少量の中性子が発生するものの、すぐに減衰することから影響は少ないとされています。原子力発電に比べると、放射性廃棄物処理のリスクやコストを削減することが可能です。

もう1つは、発電自体が高い安全性を持っていることです。核融合には核分裂のように連鎖反応が起きることがないため、核反応の暴走が起きにくいとされています。システムの電源を切れば核反応が停止するので、電源が失われた、または燃料の投入が停止された場合でも、安全な状態を保つことができます。上記のさまざまなメリットから、核融合発電は「夢のエネルギー」と呼ばれています。

核融合発電のデメリットは

一方で、デメリットや課題もあります。デメリットは、設備の技術や開発に莫大なコストがかかる点です。ITER建設のプロジェクトでは、実験炉段階にもかかわらず約2.5兆円(1ユーロ135円換算)が投資されています。実用化に向けてはコストの低下が必要になります。

また、課題は技術的なハードルが高いことです。核融合発電では原子を核融合するために、燃料をプラズマ状態にしてから融合させます。高速で移動するプラズマを高温で制御して、核融合反応を維持しなければなりません。プラズマの制御を可能にする技術や炉の開発など、技術開発が必要な項目が多数あります。

核融合発電の実用化はいつ実現するのか

核融合発電の実用化に向けた海外の動き

核融合実験炉を建設する国際プロジェクトのITER計画では、2007年に建設が始まりました。2020年には重要な機器が建設サイトに到着して、ITERの組み立てを開始。ただ、部品の不具合や新型コロナウイルス感染症の拡大などで建設に遅れが出ています。

初期運転は当初、2025年に始まる予定でしたが、2024年11月現在では、9年遅れの2034年に運転を開始する予定です。また、燃料に重水素と三重水素を使う本格的な核融合運転への移行も、当初の計画だった2035年から2039年への延期が決まっています。

ITER計画とは別に、各国も開発を進めています。中国は2027年に実験路を稼働する予定で、その後に商業炉の前段階となる原型炉を開発する方針です。アメリカは2030年代に民間主導で原型炉を建設して2040年代に商業運転の開始を目指しているほか、イギリスも2040年までに原型炉を建設することにしています。

核融合発電の実用化を目指す日本のスタートアップ企業

日本では、政府が核融合発電の実証を2030年に行う方針を打ち出しています。国内では量子科学技術研究開発機構、自然科学研究機構核融合科学研究所、大阪大学レーザー科学研究所が中核研究施設となっていて、今後設備を拡充する方針です。

スタートアップ企業による開発も進められています。核融合発電の実証プロジェクトFASTは、核融合スタートアップの京都フュージョニアリングをはじめ、三菱商事や三井物産などの企業と、東京大学、京都大学、東北大学などの教授が参加しています。国の方針でもある2030年代の発電実証を目指しています。

また、炉の開発を目指すスタートアップもあります。東京都中央区にあるヘリカルフュージョンは、自然科学研究機構核融合科学研究所などと共同で開発を進めていて、2034年に初号機の完成を目指しています。

核融合発電の2030年代の発電実証に向けた期待と課題は

核融合発電は海水が由来の燃料を使うことができるため、従来のエネルギー燃料を海外に依存している日本にとっても、早期の実現が期待されている技術です。

事業化を目指して次々とスタートアップが立ち上がっていた海外に比べると、日本は当初出遅れていると見られていましたが、ここにきて民間主導のプロジェクトであるFASTやスタートアップの動きも活発になっています。2030年代の発電実証が実現できれば、世界をリードすることも可能になります。

日本が核融合発電を早期に実現していくためには、参加しているITER計画を最大限活用しながら、今後も重要技術の研究開発や人材育成に官民で取り組んでいく必要があるといえそうです。

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