セルロースナノファイバー(CNF)とは?
「セルロースナノファイバー」とは、木材などの植物から作られる、髪の毛の数万分の1ほどの非常に細い繊維状の素材です。
環境に優しいだけでなく、優れた特性を持つことから、さまざまな分野での活用が期待されています。
ここでは、セルロースナノファイバーの特徴についてわかりやすく解説します。
温暖化対策に貢献!植物由来のエコな繊維
セルロースナノファイバー(CNF)とは、植物の細胞壁を構成する主成分「セルロース」を、ナノレベル(1ミリの100万分の1)という非常に細いサイズまで解きほぐして作られる繊維のことです。
主に木材を原料としますが、下記のようなさまざまな植物資源から製造可能です。
- 竹
- 稲わら
- 麦わら
- もみ殻
- 農業残さ(野菜くず、コーヒーがら、ジュースの搾りかす、みかんの皮など)
- 草本類(ススキなど)
- 海藻 など
セルロースナノファイバーは、石油由来のプラスチックの代替品として利用することで、地球温暖化の原因であるCO₂排出量の削減に役立ちます。
さらに、国内の森林資源を活用することは森林保全にもつながるため、セルロースナノファイバーが普及すれば温暖化対策を一層推進できる点もポイントです。
地球温暖化の進行が危惧されている今、セルロースナノファイバーは、環境に優しいサステナブルな素材として注目されています。
セルロースナノファイバーの作り方
セルロースナノファイバーは、主にセルロースの「精製処理」と「解繊処理」という2つのステップで作られます。
①精製処理
まず、木材などの原料を薬品で処理し、セルロース以外の不要な成分(リグニンやタンパク質など)を取り除きます。
この工程によって、紙の原料としても知られるセルロース繊維の集合体「パルプ」が作られます。
②解繊処理
次に、精製したパルプをナノサイズまで細かくほぐします。
解繊方法には、高圧で噴出したり、すり潰したりする「機械的処理」と、薬品(TEMPO触媒など)を使って繊維をほぐれやすくする「化学的処理」があります。
これらの方法でパルプを解きほぐすことで、極細のセルロースナノファイバーが得られます。
日本政府も推進!世界が注目する次世代素材
セルロースナノファイバー(CNF)は、その環境性能の高さから、地球温暖化対策の切り札として、日本政府も実用化を強力に後押ししています。
例えば、2016年~2019年度には、環境省「セルロースナノファイバー(CNF)等の次世代素材活用推進事業」のひとつとして「NCV(Nano Cellulose Vehicle)プロジェクト」が実施されました。
NCVプロジェクトとは、セルロースナノファイバー製の各種部品を搭載した軽量化自動車を開発するプロジェクトで、16%の軽量化、および11%の燃費向上が実証されています。
こうした動きは日本国内にとどまらず、アメリカやヨーロッパ各国でも、セルロースナノファイバーの利用促進に向けた政策や研究開発が活発に推進されており、世界中から大きな期待が寄せられています。
セルロースナノファイバーがもたらすメリット5つ

セルロースナノファイバーがこれほどまでに注目を集める理由として、他の素材にはない優れたメリットを持っていることが挙げられます。
ここでは、セルロースナノファイバーが持つ代表的な5つのメリットをご紹介します。
メリット1:植物由来で環境負荷が少ない
セルロースナノファイバーの最大のメリットは、植物という再生可能な資源から作られる点です。
植物は成長過程でCO₂を吸収するため、セルロースナノファイバーを燃やしても大気中のCO₂は実質的に増えない「カーボンニュートラル」な素材とされています。
石油から作られるプラスチックの代替として利用することで、地球温暖化の抑制に貢献できます。
メリット2:製品の軽量化で省エネに貢献
セルロースナノファイバーは、「鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度」を持つといわれています。
この「軽くて強い」という特性を活かせば、さまざまな製品の軽量化が可能です。
例えば、自動車のボディや部品に利用すれば車体が軽くなり、燃費が向上します。製品を軽くすることは、輸送時のエネルギー削減にもつながり、社会全体の省エネに貢献できます。
メリット3:熱に強く寸法が安定している
セルロースナノファイバーは、温度が変化しても伸び縮みしにくい(寸法が非常に安定している)という特徴も持っています。
その熱による変形のしにくさは、ガラスの約50分の1とも言われるほどです。
この特性から、精密さが求められる電子部品の基板や、半導体の材料など、最先端の技術分野での活用が期待されています。
メリット4:酸素を通しにくく食品などを守る
セルロースナノファイバーは、酸素などの気体を通しにくい「ガスバリア性」という優れた性質を持っています。
食品を新鮮に保つ包装フィルムには、現在、石油などの化石資源から作られたものが多く使われていますが、セルロースナノファイバーのガスバリア性を活かせば、化石資源に頼らない、植物由来の新しい包装材を作ることが可能になります。
食品ロスの削減だけでなく、脱プラスチックにも貢献する技術として期待されています。
メリット5:混ぜるだけで既存材料の性能を向上
セルロースナノファイバーは、プラスチックなどの樹脂に混ぜるだけで、その材料全体の強度や寸法安定性などの特性を飛躍的に高められます。
これにより、樹脂やゴムなどの既存材料を使いながら、より高性能な製品を生み出すことが可能になります。
すべての材料を新しいものに置き換える必要がないため、効率的な性能向上が期待できます。
セルロースナノファイバーのデメリット3つ
多くのメリットを持つセルロースナノファイバーですが、本格的な普及に向けては、まだ課題も残されています。
ここでは、セルロースナノファイバーが抱える主なデメリットを3つご紹介します。
デメリット1:製造コストが高い
現在のところ、セルロースナノファイバーの製造には多くのエネルギーが必要で、コストが高くなってしまうのが大きな課題です。
具体的には、高機能な素材である炭素繊維が1kgあたり約3,000円、ガラス繊維が約300円なのに対し、セルロースナノファイバーは約3,000 円~数万円(30%CNF 相当)とされています。
研究開発によって製造コストは以前より下がっており、環境省も将来的には数百円~1,000 円程度/kgを目標価格としていますが、依然として他の繊維材料より高いことが、さまざまな製品への量産化に踏み切れない本質的な課題と言えます。
デメリット2:品質のコントロールが難しい
ひと言にセルロースナノファイバーと言っても、実はその性質は一種類ではありません。
原料にする植物の種類や解繊方法によって、でき上がる繊維の太さや長さ、特徴がメーカーごとに大きく異なるのが現状です。
そのため、製品開発の際には「どのようなセルロースナノファイバーを使えば、狙い通りの性能が出せるのか」を慎重に見極める必要があります。
単に解繊度を高くすれば性能が良くなるわけでもないため、品質のコントロールが難しい点が課題となっています。
デメリット3:水分を吸収しやすい
セルロースナノファイバーは、親水性が高く吸水しやすい性質を持ちます。
そのため、樹脂との複合化など特定の用途では、水分量を減らすための「脱水・乾燥工程」や、表面を化学的に改質して水を弾く「疎水化処理」が必要です。
製造工程にこうした処理が必要になる場合、さらなるコスト増加を引き起こす原因になります。
セルロースナノファイバーの具体的な用途と製品開発事例

セルロースナノファイバーは、その優れた特性を活かして、非常に幅広い分野で実用化や研究開発が進んでいます。
ここでは、私たちの身の回りにある製品から最先端の工業製品まで、セルロースナノファイバーの具体的な活用事例をご紹介します。
自動車・モビリティ分野:燃費向上とCO₂削減の切り札
自動車業界は、車体の軽量化による燃費向上など、セルロースナノファイバーの活用に大きな期待が寄せられる分野のひとつです。
環境省の事業として実施された「NCVプロジェクト」では、セルロースナノファイバーをボンネットやドアパネルなどの内外装部品に採用したコンセプトカーを開発。
従来比で10%以上の軽量化(鋼板を主材料とした同クラスの車体と比較して188 ㎏/台の軽量化)を達成しています。
そのほか、タイヤの強度を高めて操縦安定性を向上させたり、車載用バッテリーへの応用も検討されています。
住宅・建材分野:省エネで快適な住まいを実現
住宅分野では、セルロースナノファイバーの断熱性や強度を活かした建材開発が進んでいます。
例えば、鹿児島県産の竹を原料にしたセルロースナノファイバーを樹脂サッシに配合した実証事例では、サッシの強度がアルミサッシと比較して30%以上向上し、断熱性能も既存品と同等を達成しています。
また、このサッシによる住宅の冷暖房効率の向上も確認されました。
セルロースナノファイバーを住宅建材に活用することで、快適で長持ちする住まいづくりへの貢献が可能です。
電化製品・電子デバイス分野:軽さ・薄さ・強さを実現
セルロースナノファイバーは、家電製品や電子デバイスの進化にも貢献します。
例えば、パナソニックは、コードレススティック掃除機の本体部品にセルロースナノファイバー樹脂を採用し、強度を保ちながら約10%の軽量化を実現しました。
また、セルロースナノファイバーの「透明で熱に強く、曲げられる」という特性を活かせば、自由に折りたためるスマートフォンや、極薄の太陽電池パネルなど、未来のデバイスを実現できる可能性があります。
日用品・化粧品・食品分野:暮らしを豊かにする多様な活用法
セルロースナノファイバーは、私たちの身近にある日用品にも活用されています。
化粧品:
保湿性を付与できることに加え、さっぱりとした感触を与えられるため、化粧水などに配合されています
日用品:
三菱鉛筆のボールペン「ユニボール シグノ 307」では、インクにセルロースナノファイバーを混ぜることで、なめらかな書き味を実現しています
食品:
和菓子の生地に混ぜて、しっとりとした食感を長持ちさせるなど、食品添加物としても活用されています
開発をリードする日本の主要企業
セルロースナノファイバーの研究開発や実用化において、日本の製紙会社は世界をリードする存在です。
ここでは、代表的な3つの企業とその取り組みをご紹介します。
日本製紙株式会社:「セレンピア®」を幅広い分野に展開
日本製紙グループは「セレンピア®」のブランド名で、食品から工業製品まで幅広くセルロースナノファイバー事業を展開しています。
例えば、静岡県富士市の菓子メーカー「御菓子庵 田子の月」と共同して「セレンピア®」を生地に配合したどらやきを開発。しっとり感を保つことで日持ちを向上させています。
さらに、同社のCNF強化樹脂はヤマハ発動機の水上オートバイ部品にも採用され、CNF強化樹脂を活用した輸送機器部品として世界初の量産化事例となりました。
王子ホールディングス株式会社:透明CNFシートのパイオニア
王子ホールディングスは、透明なセルロースナノファイバーシート「アウロ・ヴェール」を世界に先駆けて開発しました。
このシートは、ガラス並みの高い透明度・寸法安定性を持ちながら、紙のように軽くてしなやかに折り曲げられるのが特徴です。
さらに、上記の特性に加えて、耐水性も備えた「アウロ・ヴェールWP」もラインナップ。
シート開発だけでなく、天然ゴムやポリカーボネート樹脂とCNFを複合させた材料の開発にも力を入れており、産業分野での幅広い活用を目指しています。
大王製紙株式会社:独自の水分散技術と高機能シート
大王製紙は「ELLEX(エレックス)」のブランド名で、セルロースナノファイバー事業を展開しています。
すでに、CNFを配合したトイレ用ペーパークリーナーを発売している他、高性能卓球ラケットの部材、室内用塗料の添加剤としても採用されており、日用品から産業用途まで幅広く実用化を進めています。
2025年度には生産能力を従来比20倍の年間2,000トン規模に引き上げる商用プラントの稼働を計画しており、量産化に向けた動きを加速させています。
「エコな電気」も環境対策の切り札に!
セルロースナノファイバーは、優れた特性を持ちながらCO₂削減にも貢献できる新素材です。
異常気象の増加など、地球温暖化による影響がますます懸念される今、温暖化対策の切り札として大きな期待が寄せられています。
実は、こうした未来の技術だけでなく、私たちの家庭ですぐに実践できる、効果的な温暖化対策があるのを知っていますか?
それが、毎日使う「電気」を見直すことです。
家庭から排出されるCO₂のうち、約半分は電気の使用によるもの。この電気をCO₂排出のないクリーンなものに切り替えることで、手軽に効率良く温暖化対策に貢献できます。
エバーグリーンの電気で始める、地球に優しい暮らし

ご家庭の電気をCO₂排出のないエコな電気に切り替えるなら、『エバーグリーン』がおすすめです。
エバーグリーンは、国内有数のバイオマス発電事業者であるイーレックスと東京電力エナジーパートナーが、脱炭素社会の実現に向けて設立した共同出資会社です。
ここでは、エバーグリーンの特徴やプランを詳しくご紹介します。
「CO₂排出実質ゼロ」の電気で家庭の脱炭素化を後押し!
エバーグリーンは、すべてのプランで、再生可能エネルギー100%で発電されたエコな電気を提供しています。
そのため、ご家庭の電気をエバーグリーンに切り替えるだけで、月々の電気使用によるCO₂排出量を実質ゼロにできるのがメリットです。
具体的には、一般的なファミリー世帯の場合、1ヶ月あたり約148kgものCO₂を削減できます。これは実に、杉の木およそ11本分の植林効果に相当する削減量です。
※CO₂排出量は令和3年度全国平均係数(0.434kg-CO₂/kWh)をもとに計算
※植林効果は「森林の二酸化炭素吸収力」(関東森林管理局/林野庁)をもとに、杉の木1本当たりの年間CO₂吸収量を14kgとして計算
家庭からのCO₂排出量を大幅に減らせることに加え、一度切り替えれば削減効果がずっと続くのも嬉しいポイントです。ぜひこの機会にエバーグリーンをご検討ください。
ライフスタイルに合わせて選べるエバーグリーンのプラン
エバーグリーンでは、環境への優しさに加えて、ご家庭のライフスタイルにも寄り添うユニークなプランをご用意しています。
- ライフスタイルプラン
一定の電気使用量まで月々の料金が定額になる「変動ゼロ」が魅力のプラン。季節による電気代変動が気になる方におすすめ。家計の見通しが立てやすくなるのもメリットです。 - あるく・おトク・でんき
歩数に応じて電気代が安くなる、健康志向の方に嬉しいプランです。楽しみながら健康づくりと環境貢献を両立できます。 - 保険でんき
電気の契約に、「もしも」に備える個人賠償責任保険がセットになった安心プラン。自転車事故などの日常的なリスクをカバーし、ご家族の毎日を守ります。
各プランの詳細は、エバーグリーンの公式サイトをご覧ください。
エバーグリーンへの切り替え申し込みは、Webサイトからわずか5分程度で完了します。
現在の電力会社への連絡もエバーグリーンが行うため、手間なく切り替えが可能です。
サステナブルな未来は「選ぶ」ことから始まる
セルロースナノファイバーのような次世代の技術を活用すること。そして、私たちが毎日使う電気を選ぶこと。
どちらも、サステナブルな社会につながる大切なアクションです。
国や企業レベルの大きな技術革新だけでなく、一人ひとりの身近な選択・取り組みが、地球の未来をつくります。
ぜひこの機会に、エバーグリーンのエコな電気を選んで、地球に優しい暮らしを始めてみませんか?
- 出典:
- 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)|東大が画期的なCNFの製法を開発 産学連携により実用化に成功
- 環境省「Nano Cellulose Promotion」|CNFとは
- 環境省|脱炭素・循環経済の実現に向けたセルロースナノファイバー利活用ガイドライン
- 一般社団法人 日本印刷産業連合会|印刷用語集 – パルプ
- A Comprehensive Review on Cellulose Nanofibers, Nanomaterials, and Composites: Manufacturing, Properties, and Applications
- 産総研マガジン|セルロースナノファイバー(CNF)とは?
- プラスチックス・ジャパン・ドットコム|セルロースナノファイバー入門(2) CNFの特徴と用途
- 大王製紙株式会社|セルロースナノファイバー(CNF)
- 日本製紙グループ|日本製紙がつくる未来セルロースナノファイバーの開発
- eTREE|セルロースナノファイバーとは|デメリットや用途について解説
- 王子ホールディングス|セルロースナノファイバー(CNF)
- 環境省「ナノセルロースプロモーション」|CNFの成果品と可能性/住宅建材
- JFEロックファイバー株式会社|第4回 次世代省エネ基準:数字で確認!”断熱性能”
- 日経クロステック(xTECH)|パナソニックが掃除機に採用、CNF技術から生まれた樹脂
- 丸紅株式会社|セルロースナノファイバーを使用した化粧品原料の販売開始について
- ヌーヴェル日本版|化粧品用新素材「セルロースナノファイバー」(CNF)が脚光
- 三菱鉛筆株式会社|ユニボール シグノ 307|ボールペン
- 富士市CNFプラットフォームウェブサイト|CNFの用途展開事例 実用化例 : 和菓子(どらやき)
- 日本製紙グループ|セルロースナノファイバー(CNF):cellenpia
- 日本製紙グループ|セレンピア®スペシャル対談
- 日本製紙グループ|CNF強化樹脂がヤマハ発動機の水上オートバイ部材に採用
- 王子ホールディングス株式会社|CNF創造センター
- 日刊工業新聞|王子HD、耐水CNFシート開発
- 大王製紙株式会社|セルロースナノファイバー
- 日刊工業新聞 |大王製紙、CNFブランド名「エレックス」に
- 大王製紙株式会社|CNF複合樹脂「ELLEX-R67」 商用プラント設置
- 日本経済新聞|大王製紙、植物由来の繊維含む複合樹脂 生産能力20倍
- Papermall|=大王製紙=CNF水分散液『ELLEX-S』が室内用空気改善塗料に採用