コーヒーの2050年問題とは?

「コーヒーの2050年問題」とは、気候変動や世界的な消費量の増加によって、2050年以降にコーヒーを今のような価格と品質で楽しむことが難しくなるかもしれない、という見通しのことです。
きっかけは、2015年に学術誌『Climatic Change』の第129巻に掲載された“A bitter cup”(一杯の苦いコーヒー)と題された論文でした。論文では、地球温暖化が進むことで「2050年までにコーヒーの適作地域が半減する」と予測されています。
特に深刻なのは、世界のコーヒー豆生産量の約60〜70%を占める「アラビカ種」です。アラビカ種は、普段私たちがよくレギュラーコーヒーとして飲んでいる、風味豊かで高品質なコーヒーです。
しかし、栽培条件が繊細なため気候変動の影響を受けやすく、このままでは収穫量が減り、価格高騰を招くおそれがあります。
コーヒーの2050年問題が起こる主な原因

コーヒーの栽培地が減ってしまう背景には、地球規模の環境問題が深く関わっています。
ここでは、「栽培環境の変化」と「病害虫の発生エリア拡大」という2つの側面から、なぜ栽培地が減ってしまうのかを具体的に見ていきましょう。
原因1:地球温暖化による栽培環境の変化
アラビカ種は、標高1,000~2,000mの涼しい高地で、平均気温15~24℃、年間降水量1,500~2,000mmといった限られた条件でしか育ちません。
地球温暖化による気温上昇は、繊細なアラビカ種の栽培に深刻な影響を与えます。コーヒーはゆっくり育つほど風味を蓄えて美味しくなるといわれますが、気温が上がると成長が早まりすぎてしまい、品質の低下につながります。
また、温暖化は異常気象も引き起こします。雨期に必要な雨が降らない干ばつや、逆に雨が降りすぎることで、収穫量が大幅に減ってしまいます。
実際に2020年には、過去最大級のハリケーンが中央アメリカに位置するホンジュラスを襲い、栽培地域のおよそ60%が壊滅的な被害を受けました。
原因2:病害虫の発生エリア拡大
温暖化は、コーヒーの木に大きな被害を与える病害虫の活動も活発にしています。
特に深刻なのが、高温多湿を好むカビが原因の「さび病」です。さび病に感染すると、葉の裏にオレンジ色の斑点ができて光合成ができなくなり、最終的には木が枯れてしまいます。ひとたび農園で発生すれば、その年の収穫がゼロになることもあるほどです。
温暖化によって、これまで被害が少なかった高地にもさび病の範囲が広がっています。
さらに、気温の上昇はコーヒーの実を食べてしまう害虫「コーヒーベリーボーラー」の大量発生も引き起こしています。収穫量が激減することは、特に小規模な農家の生活に大きな打撃を与え、コーヒー栽培を諦めざるを得ない状況を生み出しています。
コーヒー2050年問題がおよぼす影響

「コーヒーの2050年問題」は、私たちの食文化や経済に直接つながる、身近な課題です。気候変動とコーヒー消費量の増加がこのまま続けば、将来、今のような価格と品質でコーヒーを楽しむことが難しくなるかもしれません。
ここでは、コーヒーの2050年問題が私たちの暮らしに与える影響を詳しく解説します。
コーヒーの価格高騰と品質の低下
気候変動でコーヒーの生産量が減る一方、世界のコーヒー消費量は増え続けています。需要が供給を上回れば、コーヒー豆の価格が高騰する可能性は高いでしょう。
特に、世界最大の生産国であるブラジルで不作が起きると、世界的なコーヒー不足と価格高騰に直結します。このままでは、コーヒーが一部の人しか楽しめない高級品になってしまう可能性も否めません。
また、栽培環境の悪化は、コーヒーの風味や香りを決める豆の品質低下にもつながります。豊かな風味を持つアラビカ種の栽培地が減ることで、私たちが慣れ親しんだ美味しいコーヒーが手に入りにくくなるおそれがあります。
コーヒー生産者の生活基盤の崩壊
世界のコーヒーの70%以上は、5ヘクタール以下の小規模な農家によって栽培されています。こうした農家にとって、収穫量が減ることは収入の減少に直結し、生活を脅かす深刻な事態となっています。
コーヒーの生産地である「コーヒーベルト」には発展途上国が多く、多くの農家が貧困と隣り合わせの生活を強いられています。収穫量の減少や病害虫の被害によって、「コーヒーでは生活できない」と栽培を諦め、他の作物に転作する農家も増えています。
気候変動による農業被害が深刻化し、故郷を離れざるを得ない人々も出てきており、生産者の生活基盤そのものが崩壊の危機に瀕しています。
コーヒーの未来を守る企業の取り組み
「コーヒー2050年問題」は、気候変動や生産者の貧困といった課題が複雑に絡み合っており、業界全体での取り組みが不可欠です。
ここでは、コーヒー業界をリードする企業が、問題解決に向けてどのような対策を進めているのか、3社の事例を紹介します。
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社:気候変動に強い品種開発と生産者支援
スターバックスは、コスタリカにある自社農園「ハシエンダ アルサシア」で、気候変動や病害虫に強いコーヒーの品種開発を進めています。
開発された新しい品種のコーヒーの木は、“Starbucks One Tree for Every Bag”キャンペーンを通じて生産者に提供されています。
また、世界10ヶ所にあるファーマーサポートセンターを通して、栽培に関する研究情報を生産者に無償で提供し、コーヒー豆の生産現場を支える取り組みも実施。
さらに、スターバックスでは独自のガイドライン「C.A.F.E. プラクティス」を設けています。
品質や経済的な透明性にくわえ、社会的責任や環境への配慮といった基準を満たした農園からコーヒー豆を購入することで、持続可能なコーヒー生産を業界全体で推進しています。
UCC上島珈琲株式会社:サステナブルな調達と自社農園での研究
UCC上島珈琲は、「コーヒーの力で、世界にポジティブな変化を」という考えのもと、サステナビリティを重視した取り組みを行っています。
2024年8月には、2030年までに森林破壊を伴わないことが確認されたコーヒー豆のみを使用する「森林破壊ゼロ宣言」を発表しました。また、ルワンダなどの生産国で栽培技術の指導を行うなど、持続可能な労働環境と経済成長を支援しています。
ハワイにある直営農園では、木陰をつくって直射日光からコーヒーを守る「シェードツリー」の導入や、病害虫に強い品種への接ぎ木、農園の畑から出る「残渣(ざんさ)」を堆肥にする循環型農業などを実践し、得られた知識を他の生産地と共有しています。
キーコーヒー:国際研究機関との協働と品種開発への挑戦
キーコーヒーは、世界的なコーヒーの研究機関であるワールド・コーヒー・リサーチ(WCR)と協力し、問題解決に取り組んでいます。
インドネシアにある直営農園では、WCRが指定した品種を世界各地で同時栽培する国際的な実証試験を実施。この試験では、病気に強く、生産性が高く、さらに美味しいという条件を兼ね備えた優良な品種を見つけ出すことを目標にしています。
それぞれの地域に適した優れた品種を世界中に届けることで、生産地の多様性を守り、安定したコーヒー栽培を実現することを目指しています。
美味しいコーヒーを守るために私たちができること
「コーヒー2050年問題」に対して、私たちに何ができるのでしょうか。ここでは、消費者として日常の中で実践できる具体的なアクションを2つ提案します。
環境や人に配慮した「認証コーヒー」を選ぶ
コーヒーを選ぶとき、その背景にある生産者のストーリーや環境への負荷を少しだけ意識してみましょう。
お店で「国際フェアトレード認証」や「レインフォレスト・アライアンス認証」といったマークがついた商品を見たことはありませんか?


これらの認証マークは、生産者の生活や労働環境、そして自然環境に配慮して作られたコーヒーであることの証です。
認証コーヒーを選ぶという行動は、公正な取引を支え、生産者の暮らしを守る意思表示になります。私たちの日々の選択を、コーヒー産業全体の持続可能性を高める力にしていきましょう。
根本原因である地球温暖化の対策に取り組む
コーヒーの栽培地を脅かす根本的な原因は、地球温暖化です。私たちが日々の暮らしで排出するCO₂が、巡り巡ってコーヒーの未来に影響を与えていることを忘れてはいけません。
例えば、マイボトルやエコバッグを使うことは、プラスチックごみを減らし、環境負荷を低減する身近なアクションです。
そして、日々の消費行動そのものを見直すことも大切です。「安いから」という理由だけでなく、「どんな背景で作られたのか」を考えて一杯を選ぶ。
そうした意識を持つ人が増えることが、コーヒーを取り巻く世界を変えるきっかけになります。美味しいコーヒーをこれからも楽しむためのカギは、私たちの責任ある選択にあります。
コーヒーの持続可能性とSDGs

「コーヒー2050年問題」は、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)とも深く関わっています。SDGsは、2030年までに、より良い世界を実現するための17の国際目標です。
コーヒーが栽培されて私たちのもとに届くまでの工程は、これらの目標と密接につながっています。
貧困と労働環境:経済的・社会的な課題への取り組み(SDG 1, 8)
コーヒーの生産地には開発途上国が多く、貧困や児童労働といった深刻な社会課題を抱えています。
気候変動は、コーヒー生産者の収入を不安定にし、貧困から抜け出すことを一層難しくしています(目標1:貧困をなくそう)。地球温暖化の進行を食い止めることは、生産者の生活を守ることに直結します。
また、コーヒー産業では、生産コストの増大などにより、「働きがいのある人間らしい仕事」が確保されていない現実があります(目標8:働きがいも経済成長も)。生産者の生活向上と、児童労働の根絶などを両立していくことが不可欠です。
地球環境の保全と気候変動対策(SDG 6, 13, 15)
地球温暖化がコーヒー生産の未来を脅かす根本原因であるため、環境に関する目標への貢献は特に重要です。
コーヒーの栽培や精製には大量の水が必要であり、限りある水資源の適切な管理が求められます(目標6:安全な水とトイレを世界中に)。
そして、温室効果ガスの削減は、まさに「コーヒー2050年問題」の中心にある課題です(目標13:気候変動に具体的な対策を)。
【関連記事】SDGsの目標13をわかりやすく解説!目標の中身を知ろう
さらに、農園に木を植えて森の中でコーヒーを育てる「アグロフォレストリー」のような農法は、生産地における生物多様性を守り、豊かな生態系を育むことにもつながります(目標15:陸の豊かさも守ろう)。
【関連記事】SDGsの目標15ってなに?世界の現状や私たちができる取り組みを解説
業界と消費者が協力するパートナーシップ(SDG 12, 17)
コーヒーの持続可能性を実現するためには、企業、生産者、そして私たち消費者が協力し合うことが不可欠です(目標17:パートナーシップで目標を達成しよう)。
企業は、環境に配慮した包装資材やカトラリーへの切り替えなどを進めています。私たち消費者は、マイタンブラーを持参したり、ごみを減らす工夫をしたりすることで、その取り組みを後押しできます(目標12:つくる責任つかう責任)。
【関連記事】SDGsの目標12とは?現状や取り組み事例を解説
「このコーヒーはどこから来たのだろう」と一杯の背景に思いをはせること。その小さな関心が、コーヒーの未来を支える大きなパートナーシップの第一歩になります。
エバーグリーンのエコな電気で未来のコーヒーを守ろう

コーヒーの未来を脅かす地球温暖化に対して、私たちが家庭でできる効果的な対策のひとつが、毎日使う電気を見直すことです。
実は、家庭からのCO₂排出量の約半分は、電気の使用に伴うもの。
現在主力となっている火力発電由来の電気から、環境に配慮した再生可能エネルギー由来の電気に切り替えることで、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」に直接貢献できます。
そして、数ある電力会社のなかでもおすすめなのが、『エバーグリーン』です。
エバーグリーンは、国内有数のバイオマス発電事業者であるイーレックスと東京電力エナジーパートナーが、脱炭素社会の実現に向けて共同で設立した電力会社です。
すべてのプランで、再生可能エネルギー100%のエコな電気をお届けしています。
電気を切り替えるだけ!家庭のCO₂排出量を実質ゼロに
エバーグリーンの電気に切り替える最大のメリットは、家庭の電気使用によるCO₂排出量を実質ゼロにできることです。
一般的なファミリー世帯の場合、エバーグリーンの電気に切り替えると、1ヶ月あたり約127kgものCO₂を削減できます。これは、杉の木およそ9本分の植林効果に相当します。
※CO₂排出量は令和5年度全国平均係数(0.423kg-CO₂/kWh)をもとに計算
※植林効果は「森林の二酸化炭素吸収力」(関東森林管理局/林野庁)をもとに、杉の木1本当たりの年間CO₂吸収量を14kgとして計算
毎日使う電気を再生可能エネルギーに切り替えるだけで、コーヒー業界が国際的に取り組む温暖化対策を、私たちも家庭から後押しできます。
基本料金0円!シンプルでわかりやすい「スマートゼロプラン」
電気を切り替える際は、環境への優しさだけでなく、月々の電気代も気になるもの。
エバーグリーンが提供するプランのなかで特におすすめなのが、月々の基本料金が0円の「スマートゼロプラン」です。
- ポイント1:毎月の「基本料金」が0円
スマートゼロプランの大きな特徴は、毎月の「基本料金」がないことです。お支払いは、実際に使った電気の量に応じて計算されるため、使用量が少ない月でも固定費に悩まされることがありません。 - ポイント2:料金単価は一律!電気の使用量が多くても安心
電気の使用量によって料金単価が変動しない、フラットな料金設定も魅力です。使用量が増えても単価が上がる心配がないため、料金の計算がとても簡単。夏場・冬場など電気を多く使う月でも安心です。 - ポイント3:Amazonギフトカード5,000円分をプレゼント!
新規でご契約いただいたお客さまには、特典としてAmazonギフトカード5,000円分をプレゼントしています。暮らしに嬉しい、おトクな特典です。
エバーグリーンへの切り替え申し込みは、Webサイトからわずか5分程度で完了します。現在の電力会社への解約連絡はエバーグリーンが代行するため、お客様自身でご連絡いただく必要もありません。
エコな電気を選ぶことで、環境に優しい暮らしを無理なく始められます。毎日使う電気だからこそ、ぜひこの機会に、地球の未来を考えた「責任ある消費」を実践しましょう。
美味しいコーヒーを未来につなぐために
「コーヒーの2050年問題」は、地球温暖化と私たちの暮らしが密接につながっていることを教えてくれる重要な課題です。
これからも美味しいコーヒーを楽しむために、私たち一人ひとりがこの問題に取り組む必要があります。
環境や生産者に配慮された認証コーヒーを選ぶこと。そして、毎日使う電気を再生可能エネルギー由来のものに切り替えること。
コーヒーショップで過ごす当たり前の風景を未来に残すために、今日からできることを始めましょう。
- 出典:
- 2050 COFFEE|2050年問題から生まれた「2050 COFFEE」
- UCC上島珈琲|2050年問題とは
- Springer Nature Link|A bitter cup: climate change profile of global production of Arabica and Robusta coffee
- Starbucks Stories Japan|国際コーヒーの日をきっかけに思いを馳せる“コーヒーの未来”
- 一般社団法人ソリダリダード・ジャパン|コーヒーの持続可能性について考える(1)
- 一般社団法人ソリダリダード・ジャパン|コーヒーの持続可能性について考える(2)
- 気候変動適応情報プラットフォーム|気候変動からコーヒーの木と生産者を守り、エシカルなコーヒーを届ける
- Columbia Law School SCHOLARSHIP ARCHIVE|Ensuring Economic Viability and Sustainability of CoffeeProductionProduction
- Daily Coffee News|Hurricane Damage Estimates Emerging from the Coffee Lands of Honduras and Nicaragua
- Starbucks Stories Japan|コーヒーストーリー vol.3「コーヒーの病気『さび病』」
- キーコーヒー株式会社|「コーヒーの2050年問題」を“3つのKEYワード”で知る
- Science Direct|The impact of coffee leaf rust on migration by smallholder coffee farmers in Guatemala
- UCC上島珈琲|UCCが取り組む「コーヒーを飲むこと」で誰もが参加できるサステナビリティ。【教えて、コーヒーアカデミー!】
- 朝日新聞SDGs ACTION!|UCC、ハワイ直営農園で気候変動対策や循環型農業磨く 「コーヒー2050年問題」に対応
- キーコーヒー株式会社|【公式オンラインショップで数量限定コーヒーを販売】 ワールド・コーヒー・リサーチとのパートナーシップ10周年を記念 『インドネシア パダマラン農園(豆)』
- キーコーヒー株式会社「FOR SUSTAINABLE COFFEE PRODUCTION」|コーヒーの明日に向けて
- 特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン|認証ラベルについて
- Rainforest Alliance|「レインフォレスト・アライアンス認証」とは何を意味するのか?
