富栄養化とは?原因から影響、国内外の事例、個人でできる対策までわかりやすく解説

ライフスタイル
2025年11月28日

ニュースで耳にする「赤潮」や「アオコ」。その根本的な原因である「富栄養化」は、生態系に深刻なダメージを与えるだけでなく、私たちの暮らしにも甚大な影響をおよぼします。この記事では、富栄養化の原因や影響から、世界と日本の事例、個人で取り組める対策まで幅広くご紹介します。

目次

富栄養化とは?

富栄養化とは、生活排水などに含まれる「窒素」や「リン」といった栄養分が、海や湖などに過剰に流れ込むことで、水質が悪化してしまう現象です。

読み方は「ふえいようか」、英語では「Eutrophication」と呼ばれます。

水中の栄養が増えると、太陽の光が届く水面近くで植物プランクトンが大量発生します。増えすぎたプランクトンは、夜間に多くの酸素を消費するうえ、死滅して水底に沈み、分解される過程でも水中の酸素を奪います。

その結果形成されるのが、多くの魚介類が生きられない「貧酸素水塊」(酸素が極端に少ない水の塊)です。

このような環境の変化は、生態系全体のバランスを崩し、生物多様性の低下を引き起こします。

さらに、一度富栄養化が進んだ水域を元の水質に戻すには、長い年月と莫大な費用がかかります。この回復の難しさも、富栄養化が深刻な問題とされる理由です。

富栄養化が引き起こす代表的な現象「赤潮」と「アオコ」

富栄養化が進むと、目に見える形で現れるのが「赤潮」や「アオコ」です。どちらも特定の生物が異常発生した結果起こる現象ですが、発生場所や原因となる生物に違いがあります。

赤潮は、主に海で発生する現象です。

特定の植物プランクトンが異常に増えることで、海水が赤褐色やオレンジ色に見えます。この大量のプランクトンが、魚のエラに詰まって呼吸を妨げたり、水中の酸素を消費して魚や貝などを死滅させたりするため、深刻な漁業被害につながります。

海岸沿いに発生した赤潮の様子。プランクトンが異常繁殖し、水面が赤く濁っている。
瀬戸内海での赤潮発生の様子(出典: せとうちネット)

一方、アオコは、湖や沼といった閉鎖性水域で発生します。

藍藻類(シアノバクテリア)という細菌の仲間が大量発生し、水面が緑色の粉をまいたようになる現象です。景観を損なうだけでなく、水道水のカビ臭の原因になったり、種類によっては毒素を出したりすることもあります。

滋賀県の琵琶湖に発生したアオコ。富栄養化によってプランクトンが大量発生し、水面が緑色に濁っている様子。
琵琶湖に発生したアオコの様子(出典: 国立科学博物館)

富栄養化の主な原因は私たちの暮らしの排水

台所で食器を洗う様子。洗剤に含まれるリン成分が河川や湖の富栄養化を引き起こす原因の一つとされている。

近年問題となっている海や湖の富栄養化は、自然現象ではなく、私たちの暮らしや経済活動が大きく影響しています。

窒素やリンの主な排出源3つ

富栄養化を引き起こす「窒素」や「リン」は、主に以下の3つの排水に含まれて、海や湖へ流れ込みます。

  • 生活排水

私たちの家庭から出る排水です。台所での食べ残しや油、お風呂や洗濯で使う洗剤など、日々の暮らしの中から排出されます。

  • 産業排水

食料品製造業や金属機械表面処理業、洗濯業など、さまざまな事業活動の過程で、窒素やリンを含んだ水が工場から排出されます。

  • 農業・畜産排水

畑で使われる化学肥料や、家畜の糞尿に含まれる栄養分が、雨水などと一緒に川や海へ流れ込みます。

特に影響が大きいのは「生活排水」

富栄養化の原因となる排水のなかでも、特に私たちの暮らしと直結しているのが「生活排水」です。その影響の大きさを、身近な例で見てみましょう。

もし、お椀一杯の味噌汁(180mL)をそのまま川に流した場合、魚が棲めるきれいな水に戻すためには、浴槽およそ4.7杯分もの水が必要になるといわれています。コップ1杯の牛乳(200mL)では、浴槽約11杯分とさらに多くの水が必要です。

私たちが普段何気なく流している生活排水が、水環境に大きな負担をかけていることがわかります。

富栄養化が生態系や私たちの暮らしにおよぼす影響

富栄養化は、水中の生き物たちに深刻な影響を与えるだけでなく、私たちの生活にも直接的な被害をもたらします。

水中の生態系への影響

富栄養化が進んだ水の中では、特定のプランクトンだけが異常に増え、生物の多様性が失われていきます。

増えすぎたプランクトンが水面を覆うと、水質の透明度が低下し、太陽光が届きにくくなることで水生植物の減少を招きます。

さらに深刻なのが、富栄養化の進行とともに形成される「貧酸素水塊」(デッドゾーン)です。酸素が極端に少ない状況では、魚類などの生き物はその領域を立ち去らざるを得なくなります

また、低酸素の状態にさらされ続けることは、生き物たちの食性や成長、繁殖といった生命活動にも悪影響をおよぼし、生態系全体のバランスを崩す原因となります。

経済や暮らしへの影響

富栄養化による生態系の変化は、漁業や私たちの暮らしにも大きな影響をおよぼします。

2021年の秋に北海道で発生した赤潮では、ウニやサケなどが長期的に大きな被害を受け、被害総額は2024年9月末時点で約110億円にものぼりました。

淡水域では、アオコの異常発生により、水道水にカビ臭が発生したり、ろ過障害が生じたりします。

また、アオコのなかには、人体に有害な毒素を作る種も存在し、海外では深刻な人名被害も報告されているため注意が必要です。

日本で起きた富栄養化の事例

富栄養化は、日本でも古くから公害や環境問題として認識されてきました。

ここでは、琵琶湖と瀬戸内海で起きた事例を通じて、対策の重要性とその後の変化を見ていきましょう。

琵琶湖:住民運動から「富栄養化防止条例」制定へ

近畿地方の重要な水源である琵琶湖では、高度経済成長期に富栄養化が進行し、1970年代には赤潮が頻繁に発生しました。

この問題に対し、原因のひとつとされたリンを含む合成洗剤の使用をやめようという「石けん運動」が県内全域で展開されました。

こうした市民の環境意識の高まりが後押しとなり、「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例(琵琶湖条例)」が1979年に制定されています。

富栄養化防止条例は、工場・農業排水に対する規制だけでなく、リンを含む家庭用合成洗剤の使用禁止を定めた画期的なものでした。

40年以上にも渡る長期間の取り組みの結果、琵琶湖の水質は改善傾向にあることが報告されています。

瀬戸内海:高度経済成長期に頻発した大規模赤潮

古くから豊かな漁業資源の宝庫であった瀬戸内海では、1960年代の高度経済成長期に工場や家庭からの排水が急増し、富栄養化が急速に進行しました。

その結果、赤潮が頻繁に発生し、漁業に壊滅的な被害をもたらしました。特に、1972年には、播磨灘で養殖ハマチ約1,400万尾が死滅し、被害額は71億円にものぼったと報告されています。

この深刻な状況を受け、社会全体で水質保全への関心が高まり、1978年には「瀬戸内海環境保全特別措置法」が制定。国を挙げた対策が進められました。

長年の取り組みの結果、赤潮の発生件数はかつての3分の1程度まで減少し、水質は大きく改善されました。

しかし、近年では、栄養が不足する「貧栄養化」が新たな課題となっており、瀬戸内海を「豊かな海」へ戻すため、施策の方針転換が図られています。

貧栄養化によって色落ちしたノリ。左が通常の濃い黒色、右が栄養不足で退色した薄い緑色のノリ。
貧栄養化によって色落ちしたノリ(出典: 兵庫県⽴農林⽔産技術総合センター)

世界で深刻化する富栄養化の事例

緑色の藻が広がる水域を上空から撮影した写真。富栄養化によりアオコが大量発生している。

富栄養化は、世界中の海や湖でも深刻な問題を引き起こしており、ときには人の命に関わる事故も発生しています。

メキシコ湾:広大な「デッドゾーン」が毎年発生

アメリカのメキシコ湾では、ミシシッピ川流域から流れ込む排水などが原因で、毎年夏に広大な「デッドゾーン」(貧酸素水塊)が発生します。

2024年夏に測定されたデッドゾーンの面積は、約6,705平方マイル。これは過去38年間の観測史上12番目に大きい規模でした。

アメリカでは、州と連邦政府が協力し、2035年までにデッドゾーンの平均面積を1,900平方マイル未満に縮小するという長期目標を掲げています。

しかし、2024年の測定値は目標をはるかに上回り、現在の5年平均面積(約4,298平方マイル)も目標の2倍以上です。海の生き物のすみかを奪う深刻な状況が、今も続いています。

ブラジル:有毒アオコによる人命被害

富栄養化によって発生するアオコは、景観を損なうだけでなく、ときには人命被害をも引き起こす危険性があります。

アオコの中には、青酸カリの60倍もの毒性を持つ有毒物質を作り出す種類がいます。こうしたアオコの毒素によって、世界では家畜や野鳥が死亡する被害が多数報告されています。

特に深刻なのが、1996年に起きたブラジルの事例です。有毒なアオコが発生した水源の水を十分に浄化しないまま病院の透析治療に使用したため、50人以上もの患者が亡くなるという痛ましい事故が起きました。

この事例は、富栄養化が単なる環境問題にとどまらず、私たちの健康や命に直接的な脅威となり得ることを示しています。

富栄養化は世界的な課題!SDGsとのつながり

富栄養化は、日本だけでなく世界が協力して取り組むべき重要な環境問題です。国連が掲げる世界共通の目標「SDGs(持続可能な開発目標)」とも深く関わっています。

SDGsの17の目標のうち、目標14「海の豊かさを守ろう」では、海の環境を守るための具体的なターゲットが設定されています。

そのなかでも「ターゲット14.1」には「2025 年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」と記されています。

世界の多くの地域で、人間活動による窒素やリンの過剰供給が起きているなか、この国際的な目標を達成するためには、私たち一人ひとりが日々の暮らしの中で具体的な行動を起こすことが不可欠です。

【関連記事】SDGs目標14は「海の豊かさを守ろう」|私たちにできることから取り組もう

富栄養化を防ぐために:個人でできる対策3選

米のとぎ汁を流す様子。家庭からの生活排水がリンや窒素を含み、水質汚濁や富栄養化の一因となる。

富栄養化の主な原因のひとつは、私たちの家庭から出る生活排水です。日々の暮らしの中でできるちょっとした工夫が、水環境の改善につながります。

ここでは、今日から実践できる3つの対策を紹介します。

① 油汚れや食べ残しは、拭き取ってから捨てる

調理器具や食器についた油汚れ、食べ物の残りカスや煮汁には、富栄養化の原因となる窒素やリンが豊富に含まれています。洗う前にキッチンペーパーなどで拭き取る習慣をつけましょう。

特に、天ぷら油500mLをそのまま流した場合、魚が棲める水質に戻すためには浴槽約500杯分もの水が必要になると言われています。

廃油や残り汁は、新聞紙に吸わせたり凝固剤で固めたりして、直接シンクに流さないようにしましょう。

② 環境に配慮した洗剤を選ぶ

洗剤の選び方や使い方を見直すことも、環境負荷を減らすための重要なポイントです。

かつて、合成洗剤に含まれるリンは富栄養化の大きな原因とされ、琵琶湖条例で使用が規制されたこともありました。

生分解性の高い植物由来の製品を選ぶこと、製品に表示されている適量を守って使うことを心がけましょう。

③ 米のとぎ汁を流さない工夫をする

家庭から出る排水の中で、特に注意したいのが米のとぎ汁です。

実は、米のとぎ汁には生活排水に含まれる窒素の約67%、リンの約95%が含まれるともいわれています。

わずか500mlのとぎ汁を排水に流しただけでも、魚が住める水に戻すには浴槽約4杯分もの水が必要であり、水環境にとっては大きな負荷となります。

とぎ汁はそのまま捨てずに、庭の植物への水やりなどに再利用しましょう。また、とぎ汁の出ない無洗米を選ぶことも、川や海をきれいにするためには有効な対策です。

エコな電気に切り替えて、暮らしの環境負荷を減らそう

海や湖の富栄養化と同じように、私たちの生活と切っても切り離せないのが地球温暖化問題です。

猛暑や大型の台風など、異常気象が「当たり前」になりつつある今、地球温暖化は私たちの暮らしに直接影響をおよぼす深刻な脅威となっています。

地球温暖化の主な原因はCO₂などの温室効果ガスです。そして、実は家庭から出るCO₂の約半分が「電気の使用」に由来します。

だからこそ、私たちが毎日何気なく使っている電気を、再生可能エネルギー由来のクリーンなものに切り替えることは、暮らしの環境負荷を大きく減らすことにつながります。

さらに、一度電気の契約を見直せば、その後も継続してCO₂を削減できるため、家庭で無理なく温暖化対策に取り組めるのも嬉しいポイント。

ぜひこの機会に、ご家庭の電気の見直しを検討してみませんか?

CO₂排出量実質ゼロへ!エバーグリーンのエコな電気

手のひらに乗せた電球の中で植物が育つイメージ。再生可能エネルギーや持続可能な未来を象徴している。

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エバーグリーンは、東証プライム上場のイーレックスと東京電力エナジーパートナーが共同で設立した会社です。すべてのプランで、再生可能エネルギー100%のエコな電気を提供しています。

ここでは、エバーグリーンに切り替えるメリットや、おすすめの料金プランをご紹介します。

切り替えるだけで家庭のCO₂排出量を大幅削減!

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※CO₂排出量は令和5年度全国平均係数(0.423kg-CO₂/kWh)をもとに計算
※植林効果は「森林の二酸化炭素吸収力」(関東森林管理局/林野庁)をもとに、杉の木1本当たりの年間CO₂吸収量を14kgとして計算

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基本料金0円の「スマートゼロプラン」

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地球の未来のために、今日からできるアクションを

富栄養化は、私たちの生活排水などが原因で起こる身近な環境問題です。日々の暮らしで排水に少し気を配るだけで、海や湖などの水環境を守ることにつながります。

さらに、水環境だけでなく地球全体の未来を考えるなら、家庭の「電気」の見直しも効果的なアクションのひとつ。

ぜひ、エバーグリーンのエコな電気に切り替えて、無理なく賢く、未来へ貢献する暮らしを実現しましょう。

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皆さまの暮らしを支えます

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