最終保障供給とは?制度の仕組みや料金、契約などを解説

2023年04月24日

最終保障供給とは、契約している小売電力事業者が事業撤退をした際などにセーフティネットとなる制度です。ただ、料金は通常のプランよりも値上げされ、市場連動要素を含む料金体系への見直しも行われていて、料金面では注意も必要です。今回は最終保障供給について解説します。

【目次】


最終保障供給とは


料金が高い最終保障供給


最終保障供給の注意点とは






※この記事は、2023年4月24日に公開した記事ですが、追記‧更新し、2023年9月26日に再度公開しました。

最終保障供給とは

最終保障供給はセーフティネット


最終保障供給は、電力の供給を受ける需要家が、小売電気事業者の急な撤退やその他の不測の事態などによって、いずれの小売電気事業者とも契約の交渉が成立しなかった場合に、旧一般電気事業者である大手電力会社の送配電部門から、一般送配電業者から電力の供給を受ける仕組みです。

最終保障供給が注目されているのは、燃料の高騰などにより電気の調達コストが急増して、撤退や事業縮小を決める新電力が相次いでいるからです。電気の契約を打ち切られて、行き場を失った企業などが最終保障供給に流れ込んでいます。いわゆる「電力難民」のセーフティネットとして機能しているのです。

最終保障供給の対象と約款


最終保障供給の対象になるのは、基本的には法人になります。50kW~2000kWの高圧や、2000kW以上の特別高圧の電力の供給を受けている需要家が、サービスを受けることができます。電気最終保障供給約款に基づいて電気が供給されます。 

一方、多くの家庭や店舗などは、50kW未満の低圧の供給を受けていますが、低圧に関しては最終保障供給の対象にはなっていません。

最終保障供給の契約件数の推移

 
最終保障供給の契約件数は、2022年2月までは毎月1000件以下で推移していました。ところが、同月に始まったロシアによるウクライナ侵攻によって液化天然ガス価格などの価格が上昇。化石燃料の価格も高騰し、日本卸電取引所(JPEX)から購入した電気を販売している新電力の経営破綻や供給停止などが相次ぎ、契約件数が急増しました。

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経済産業省 電力・ガス取引等監視委員会 2023年5月15日発表資料

電力・ガス取引監視等委員会によると、2022年3月末に契約件数が5000件を超えると、5月末には1万3000件、7月末には3万件を突破。その後も増え続けて、10月時点で4万5000件あまりにまで増加しました。その後は若干減少してほぼ横ばいになってはいるものの、依然として高い水準で推移しています。

料金が高い最終保障供給

通常の料金より値上げになる最終保障供給

 
セーフティネットとして機能している最終保障供給ですが、注意すべき点があります。それは料金です。料金の設定は国が決めていて、これまで料金は「各エリアの大手電力会社が提供している標準プランの1.2倍」に設定されてきました。

それが、2022年4月に電力・ガス取引等監視委員会が、最終保障供給の料金に卸電力市場の価格を反映させる方針を示すと、各電力会社も料金の見直しを進めました。 

最終保障供給の料金見直しで市場連動に

 
この結果、2022年9月1日から、最終保障供給の料金は市場連動要素を含む料金体系になりました。2022年度は市場価格が非常に高い時期だったため、結果的にこの見直しにより最終保障供給の料金は大幅に上昇しました。

具体的には、最低料金を大手電力会社の電気料金の1.2倍とし、市場価格が各電力会社の送配電部門が定める平均額を上回った場合に、最低料金にプラスされることになりました。

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最終保障供給の市場価格調整単価とは

 
料金の内訳は、これまでは基本料金+電力量料金(従量科金±燃料費調整額)+再生可能エネルギー発電促進賦課金で構成されていました。

それが、基本料金+電力量料金(従量科金±燃料費調整額±市場価格調整額)+再生可能エネルギー発電促進賦課金となり、市場連動に伴って市場価格調整額が新設されました。

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出典:東京電力パワーグリッド

市場価格調整単価は地域によって異なります。東京電力パワーグリットでは、市場価格調整単価が適用される月の前月末までに、ホームページに掲載して案内することになっています。

最終保障供給の注意点とは

最終保障供給の申込み方法は

 
最終保障供給を申し込む場合は、送配電事業者に問い合わせることになります。各社ともホームページに「電気最終保障供給約款」を用意していて、詳しい内容が記載されています。内容を確認したうえで、ホームページなどで入手できる申込書に記入します。

契約種別は、会社によって若干異なりますが、基本的には「最終保障電力A」、「最終保障電力B」、「最終保障予備電力」があります。

「最終保障電力A」は、高圧または特別高圧で電気の供給を受けて、電灯もしくは小型機器を使用、または電灯もしくは小型機器と動力とを合わせて使用する需要に適用するものです。一般的に、事務所、病院、スーパーなど、電灯と動力を合わせて使用する施設が対象になります。

「最終保障電力B」は、高圧または特別高圧で電気の供給を受けて動力(付帯電灯を含む)を使用する需要に適用します。つまり、工場や冷凍倉庫など、主に動力を使用する施設が対象です。

「最終保障予備電力」は、常時供給設備などの補修や、事故による生じた不足電力の補給に充てるため、予備電線路により電気の供給を受ける場合に適用します。

また、会社によっては「最終保障農事用電力」を用意しているところもあります。これは、高圧または特別高圧で電気の供給を受けて、農事用のかんがい排水のために動力(付帯電灯を含む)を使用する需要が適用になります。

最終保障供給の契約期間は1年以内

 
最終保障供給の重要な点は、契約使用期間は1年を超えないものとされていることです。受給規約が成立した日から、あらかじめ定めた契約期間満了の日までが契約期間となりますので、その間に新しい小売電気事業者と契約する必要があります。

ただ、最終保障供給は、いずれの小売電気事業者とも電気の供給にかかる契約が成立しなかった場合の供給です。どうしても新しい小売電気事業者との契約が成立しなかった場合は、最終保障供給の再締結ができる場合もあります。

また、規約期間を満了せずに最終保障契約を廃止する場合には、違約金はかかりません。基本的には各電力会社とも、契約期間満了日を待たずに、できるだけ早く小売電気事業者との契約を推奨しています。

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最終保障供給と小売事業者の市場連動プラン

 
前述したように、最終保障供給は2022年9月から価格が市場連動に見直され、かつ市場価格が高止まりしていた為、電気料金が高額となりました。

最終保障供給の料金の今後の見通しについては、燃料費の高騰が続いているため、今後も上がり続ける可能性があります。最終保障供給のリスクは、料金の高騰と言えるでしょう。

では、新しい小売電気事業者と契約する場合には、どのような選択肢があるのでしょうか。電力の契約には、一般的な契約プランと市場連動型プランがあります。

一般的な契約プランは、基本料金に加え、使用した電力量に応じて予め決められた料金分が上がっていきます。また、これに加えて燃料価格に応じて電気料金が加算・減算されます。これに対して市場連動型プランでは予め決められた単価ではなく、卸取引の価格に応じて電力量料金の単価が変動します。

JPEXでは30分単位で取引が行われています。つまり、時間帯によって電力量料金が大きく変動します。例えば、太陽光発電が活発に稼働している時間帯は、取引価格が安くなる傾向が見られます。昼間に消費電力が大きい企業などは、コストメリットが大きくなる可能性があります。

一方、最終保障供給における市場価格は、30分単位でJEPX価格と連動するものでは無く、過去のJEPX価格の平均値と連動します。その為市場連動と言えども、料金の変動が小さいというメリットがある一方、使う時間帯を見直すことによる削減余地がありません。

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最終保障供給から新しい小売電力事業者に移行する場合、完全に30分単位で時間が連動する市場連動型プランは選択肢の一つになります。エバーグリーンでは、2023年4月からWEBでの新規受付を再開し、かつ、新たに市場連動型プランを新設し、価格変動をより反映した料金体系で電力を提供しています。

また、このような市場連動要素が一般的になりつつある今、従来の電気料金体系(固定プラン)も受付をしております。詳しくはこちらをご覧ください。

https://www.egmkt.co.jp/corporation/special/campaign/02/

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