化学産業のカーボンニュートラルに向けた取り組みを解説

2023年12月20日

カーボンニュートラルの達成には、産業分野の脱炭素が欠かせません。特に鍵を握ると考えられているのが化学産業です。化学産業のカーボンニュートラルの取り組みについて解説します。

【目次】


カーボンニュートラルに向けた化学産業の現状は


海外の化学産業のカーボンニュートラル戦略とは


日本の化学産業のカーボンニュートラル戦略とは


化学産業のカーボンニュートラル実現に向けて







カーボンニュートラルに向けた化学産業の現状は

化学産業のカーボンニュートラルが重要な理由


世界各国では、2050年までにカーボンニュートラルを実現しようと目標設定や戦略策定が進めされています。カーボンニュートラルは温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするもので、具体的には温室効果ガスの排出量から植林や森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質出来にゼロにすることを意味しています。

日本でも2050年までにカーボンニュートラルを実現することを、2020年10月に政府が表明しました。2021年4月には、2030年度までに温室効果ガスを2013年年度に比べて46%削減する目標を打ち出しています。

日本国内の温室効果ガスの排出は、家計関連は2割程度で、約8割を企業と公共部門関連が占めます。環境省によると、企業・公共部門関連のうち、2021年度に最も排出している部門は産業で、35.1%でした。

スクリーンショット 2023-11-29 16.01.19.png作成:環境省

さらに、産業別の内訳を見ると、最も排出量が多いのが鉄鋼業で39%。その次に多いのが化学工業で、15%を占めています。化学産業は、鉄鋼に次いで温室効果ガス排出量が多い業種となっているのです。

スクリーンショット 2023-11-29 16.00.36.png

作成:環境省

カーボンニュートラルに挑戦する化学産業

 
化学産業の温室効果ガス排出量が多い要因は、次のようになっています。化石燃料や化石原料の燃焼によって、自社が直接排出するScope1が約7割を占めているほか、購入した電力や蒸気などを使用する間接排出のScope2があります。

特に、ナフサを分解してエチレンなどを主体とする炭化水素混合物に変換するなど、さまざまな基礎化学品を生成する際の蒸留プロセスでは、高温で高圧な熱エネルギーが必要になります。この熱エネルギーの利用が他の産業と比べて大きいことが化学産業の特徴で、脱炭素化が難しい要因の1つと言えます。

そこで化学産業が挑戦しようとしているのが、燃料と原料の双方において、化石資源からの脱却を図ることです。燃料ではLNGなどへの低炭素化、バイオマス利用などによる炭素循環、それに水素やアンモニアなどへの転換による脱炭素化などの研究開発が進められています。原料でもバイオマス化やリサイクルなどを進めることで、温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいます。

海外の化学産業のカーボンニュートラル戦略とは

欧州の化学産業のカーボンニュートラル戦略

 
化学産業のカーボンニュートラルに向けた取り組みは、世界中で進められています。まずはヨーロッパの化学産業の取り組みを見ていきます。ヨーロッパでは、廃プラスチックや廃ゴムのケミカルリサイクルの実証や、再生可能エネルギーの電力をナフサ分解炉の熱源として用いる技術の開発が進められています。

2050年までに全世界でCCO₂排出量を実質ゼロにする目標を掲げている企業が、ドイツのBASFです。ルートヴィッヒスハーフェンに本社を置く総合化学会社で、自動車、建設、医療機器、電気、電子、農業、食品など、あらゆる産業に製品とソリューションを提供。2030年までにCO₂排出量を2018年に比べて25%削減することを目指しています。

再エネ活用でカーボンニュートラルを図る海外の化学産業


その際に中心的な施策になっているのが、再生可能エネルギーの活用です。ナフサを分解する際に必要な高温なエネルギー源を、化石燃料から再生可能エネルギーによる電気に置き換えることで、CO₂排出ゼロでの基礎化学品の製造を目指しています。

BASFと同様に、世界の大手化学メーカーでは再生可能エネルギーを活用することによって、カーボンニュートラルの実現に取り組む企業が増えています。再生可能エネルギーの活用は世界の大きな流れとなっています。

日本の化学産業のカーボンニュートラル戦略とは

日本の化学産業におけるカーボンニュートラルの鍵はCO₂


一方、日本の化学産業で期待されている新しい技術が、CO₂を活用するカーボンリサイクル です。カーボンリサイクル はCO₂を炭素資源と捉えて、CO₂を回収して、多様な炭素化合物として再利用するものです。

日本の化学企業の多くは、CO₂を原料にして化学品を製造するカーボンリサイクルの技術開発に取り組んでいます。すでに商用化された技術もありますが、多くの技術は研究開発の段階で、2030年以降の社会実装に向けて、製造コストの低下や省エネルギー化などに取り組んでいます。

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日本の化学産業各社のカーボンニュートラル戦略は


具体的な取り組みを例に挙げると、三菱ケミカルホールディングスは「人口光合成」技術の開発を進めています。太陽光エネルギーと光触媒によって、水から水素と酸素を生成し、発電所や工場の排ガスなどから回収される
CO₂を、合成触媒を使って化学品に変換します。2030年までの大規模な実証と、2040年までの社会実装を目指しています。

旭化成はCO₂を原料にしてポリカーボネート樹脂を製造するプロセスを、世界で初めて確立しました。従来は有毒な化合物を使って製造していましたが、CO₂に代替することでCO₂排出量を削減するとともに、安全性の向上も実現しています。

このように、日本の化学企業では製造時にCO₂を吸収するカーボンリサイクルの技術によって、カーボンニュートラルの目標達成を目指しています。

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化学産業のカーボンニュートラル実現に向けて


化学産業のカーボンニュートラル実現への課題は


化学産業ではカーボンニュートラルの実現に向けて研究開発が進められているものの、もちろん課題もあります。

国内の化学企業が取り組んでいるカーボンリサイクル は革新的な技術として期待されていますが、水素やガスの圧縮、CO₂の分離回収など、製造時に大量のエネルギーが必要です。エネルギーを大量に消費することなくCO₂を分離し、資源化する技術を確立することが求められています。

また、ナフサを分解する装置のクラッカーが、既存のものについては老朽化が進んでいます。カーボンリサイクルだけでは化学品需要を全て補うことができないことから、クラッカーの低炭素化や燃料の転換など、クラッカーの高度利用への対応も進めなければなりません。

化学産業のカーボンニュートラルのロードマップ


化学産業ではカーボンニュートラルの実現に向けて、2030年までを既存設備の低炭素化などを進めるトランジションフェーズに位置付けています。さらに、2030年から2050年までを脱炭素化に向けた革新的な技術開発を進めるイノベーションフェーズとして、研究開発や設備投資を進めるロードマップ を描いています。 

カーボンリサイクル を活用したプラスチック原料の製造では、2050年には世界で11億トン、国内で3156万トンのCO₂を削減し、経済効果は世界で360兆円、国内で10兆円と見込まれています。化学産業がカーボンニュートラル を実現できるかどうかは、今後の技術開発にかかっています。

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