CSRD(EU企業サステナビリティ報告指令)とは?域外適用による日本企業への影響なども解説

ビジネス関連
2024年11月27日

CSRD(EU企業サステナビリティ報告指令)は、EU域内の企業に対するサステナビリティ開示指令のことです。今後日本企業にも影響が出ることになるCSRDについて、わかりやすく解説します。

目次

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CSRD(EU企業サステナビティ報告指令)とは

CSRDとは

CSRD(Corporate Sustainability  Reporting Directive=企業サステナビリティ報告指令)は、EU域内の企業に対するサステナビリティ開示規制です。 

CSRDの目的は、EUにおけるサステナビリティ報告の一貫性を高めること。加えて、金融機関や投資家、一般の人々が、比較が可能で信頼できるサステナビリティ情報を利用できるようにすることです。 

背景には、欧州で温室効果ガスの排出をゼロにする気候中立を実現することで、人々の幸福と健康を目指す欧州グリーンディールがあります。欧州委員会(EC)は、2050年のEUでの気候中立達成や、サステナブルな金融戦略に向けて、CSRD提案を2021年4月に公表。欧州議会や欧州理事会の合意を経て、2023年1月に発効されました。 

CSRDの対象企業とは

CSRDの対象となる企業は、EU域内の全ての大企業と、零細企業を除くEU域内市場の上場企業です。当初は、総資産が2000万ユーロを超えること、売上高が4000万ユーロを超えること、それに年間平均従業員が250人を超えることの3点のうち、2点を満たす企業が対象でした。 

その後、大企業の定義が2023年12月から定義が変更されました。変更点は、総資産が2500万ユーロを超えることと、売上高が5000万ユーロを超えることです。従業員250人を超えることはそのままで、3点のうち2点を満たす企業が対象となります。 

また、EU域外の売上高が大きい場合には、EU域外の企業も対象になります。具体的には後述しますが、第三国の親会社がEU域内において、2会計期間で継続して一定の売上がある場合や、EU域内の子会社が大企業また上場企業である場合、それにEU域内の支社が一定金額を超える売上がある場合などとなっています。 

CSRDのNFRDからの変更点と

EUではCSRDが発効する前には、NFRD(NonーFinancial  Reporting Directive)によって非財務情報の開示を規制していました。しかし、開示を行う企業の数や、情報の量や質が不十分なことが課題でした。 

そこで、より信頼性が高く、企業間や時系列での比較もでき、投資家などが重要と考える情報にアクセスしやすくすることを目的に、NFRDを改正してCSRD提案が行われました。 

NFRDでは対象となる企業が年間平均従業員が500人を超える大企業などとされていましたが、CSRD では前述のように大企業や上場企業、EU域内での売上高が大きいEU域外企業など、適用企業がより明確化されました。 

また、CSRDでは開示項目についても、NFRDよりも詳細に規定されています。サステナビリティに関して、リスクなどを含むビジネスモデルと戦略の説明、期限付きの目標などが求められ、サステナビリティ報告の第三者保証も新たに義務化されました。 

CSRD (EU企業サステナビリティ報告指令)の開示基準ESRS

CSRDとESRSの違いとは

CSRDとは別に、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)があります。CSRDが制度の枠組みを決めるものであるのに対して、ESRSは具体的な開示項目や基準を定めたものです。 

ESRSは欧州財務報告諮問グループが作成しました。2022年4月に公開草案が公表されたあと、11月に第1弾のESRS草案が欧州委員会に提出され、2023年7月に採択されました。 

第1弾のESRSは、すでにNFRDの適用を受けている大規模な上場企業や銀行、保険会社については、2024年1月以降に開始する事業年度から適用されています。また、NFRDの適用を受けていない大企業については、2025年1月以降に開始する事業年度から、上場中小企業については2026年1月から適用されます。上場中小企業については2028年まで免除が可能になっています。 

CSRDにおけるESRSのポイントとは

ESRSには、全般的な概念や原則を規定した横断的な基準と、要素ごとに開示項目を規定したトピック的基準があります。 

横断的な基準でポイントとなるのが、ダブル・マテリアリティの原則です。ダブル・マテリアリティは、インパクト・マテリアリティとファイナンシャル・マテリアリティの2つから構成されています。 

インパクト・マテリアリティは、企業が人または環境などへのサステナビリティ課題に影響することを指します。ファイナンシャル・マテリアリティは人または環境などに関連するサステナビリティ課題が企業に影響することにフォーカスした考え方です。 

投資家が投資を判断する際に、気候変動が企業に与える影響だけでなく、企業が気候変動に与える影響も加えた双方向の影響が示されることになります。企業がより広範囲なステークホルダーに有用な情報を開示することが、重要なポイントとなっています。 

CSRDとESRSで求められる多角的な情報開示

一方、トピック別の基準は、環境、社会、ガバナンスの3分野に分かれて設定されています。 

環境については気候変動、汚染、水・海洋資源、生物多様性・生態系、資源循環の5項目、社会については自社の従業員、バリューチェーン上の従業員、影響を受けるコミュニティ、顧客・エンドユーザーの4項目、ガバナンスではビジネス・コンダクトの1項目の、合わせて10項目の基準があります。 

このように、多角的な情報開示が求められているほか、今後もセクター別基準や第三国企業の基準などが追加されていく見通しです。 

CSRD (EU企業サステナビリティ報告指令)による日本企業への影響とは

CSRDの適用対象の拡大とは

CSRDはNFRDに比べると、対象となる企業がEU域内で1万社あまりから約5万社に拡大されると予想されています。 

さらに、EU域内の企業だけでなく、日本企業を含むEUで一定規模以上の事業を行なっているEU域外の企業に対しても、今後サステナビリティ情報の開示が義務付けられます。 

CSRDの対応が求められる企業とは

日本企業も含めて、EU域外の企業が適用になるケースとスケジュールは、次のように想定されています。 

EU域内にNFRDの適用対象ではないものの大企業に該当するこ会社がある場合は、2025年1月以降に適用開始となり、2026年には報告が求められます。 

また、上場中小企業に該当する子会社がある場合には、2026年1月以降に適用が開始となり、2027年には報告が求められます。 

それ以外にも、EU域外で設立された会社が、過去2期連続でEU域内における売上高が一定の額を超えた場合には、2028年1月以降に適用開始となり、2029年には報告が求められることになります。 

ただ、上記についてはCSRDの要件をもとにしたもので、EU加盟国がそれぞれの国内法に反映した場合に、各国ごとに変更される可能性もあります。EU域外の企業は、各国の状況を見ながら判断をすることが必要です。 

CSRDの域外適用によって影響を受ける日本企業は

ウォール・ストリートジャーナルの2023年4月に公開された記事によると、CSRDはEU域外の少なくとも1万社にサステナビリティ報告を求める可能性があると指摘されています。 

EU域外企業でCSRDが適用される条件の一つとなっている、売上が1億5000万ユーロを超えると見られる企業は約1万社あるとされ、そのうちの約8%、800社程度が日本企業だと伝えられています。 

実際にはそれ以上の企業が、CSRDに沿ったサステナビリティ報告を求められる可能性があります。 

日本企業はCSRDの適用対象になるのか確認を

日本企業にとっては、EU域内にある子会社についてCSRD対応が求められることになります。それ以外に、EUで一定規模以上の事業を展開している企業の場合も、連結ベースでのサステナビリティ情報の開示が求められる可能性もあります。 

CSRDの規制に関する情報は、随時アップデートされています。CSRDの適用対象になる可能性のある企業は、最新の情報と自社の状況を確認しながら、開示が求められる可能性がある場合は早めに準備を進めておくことが必要と言えそうです。 

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