GXとは?わかりやすく解説
GXとは何か
GXとは、グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)のことです。これまでの石炭や石油などの化石エネルギーから脱却して、二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギー中心の産業構造や社会構造に変革することを意味しています。
世界中で気温の上昇や海面水位の上昇などによって、異常気象による農作物への被害や災害が増加するなど、地球温暖化が原因ではないかと考えられる現象が相次いで起きています。そのため気候変動対策は、世界共通の課題となりました。
2015年には国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)でパリ協定が採択されました。世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること。そのためにも、今世紀後半に世界全体の温室効果ガス排出量をゼロにすることを目指しています。この「脱炭素化」の取り組みにGXは合致します。

GXとは経済産業省による造語
GXは国内産業の脱炭素化を目指した政策を進めるために、経済産業省が提唱した造語です。
GXの定義の曖昧さから、2023年に札幌市で開催された主要7か国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合では、日本が使用しているGXは共同声明には盛り込まれませんでした。
国際社会には浸透していないものの、日本ではGXの名称が様々な政策が進められています。
GXが目指す脱炭素・エネルギー安定供給・経済成長とは
日本が掲げるGXのポイントは、脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給を両立すること。その上でエネルギーを化石エネルギーからクリーンエネルギーに転換させるとともに、日本の経済を成長軌道に乗せていくことです。
この背景にあるのは、世界のエネルギー情勢の変化です。新型コロナウイルスの感染拡大が収まると、世界のエネルギー需要が逼迫し、エネルギー価格の上昇が始まりました。さらに、2022年2月にはロシアがウクライナへの侵攻を始めたことで、エネルギー危機が本格化しました。
この動きによって、日本でもエネルギー価格の高騰が引き起こされました。日本はエネルギー資源が乏しいことから、エネルギーの安定供給を実現しながら経済成長を目指すことに重点が置かれています。

GXが必要な理由とは
GXと日本のカーボンニュートラルの関係とは
日本では2020年10月に、2050年までのカーボンニュートラル達成を目指すことを表明しました。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と吸収量が差し引きゼロになる状態のことです。
その後、政府は2023年2月に「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定します。同年5月には、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行に関する法律」、いわゆるGX推進法が成立しました。
GX推進法は、カーボンニュートラルの実現を目的にしています。つまり、GXの取り組みはカーボンニュートラルを実現するために必須のものとなっています。
GXと日本の気候変動対策の関係とは
GXのポイントの一つには、前述したように脱炭素社会の実現があります。日本政府は2021年4月に、2030年度の二酸化炭素排出量を2013年度に比べて46%削減する目標を掲げました。
2025年2月には、2035年度の二酸化炭素排出量を2013年度に比べて60%削減する新たな目標を定め、国連に提出しました。この目標は環境保護団体などからは、パリ協定が目指している気温上昇を1.5℃に抑えることを目指すには不十分だと指摘されています。それでも、現状から考えれば高いハードルであることは間違いありません。
脱炭素社会を実現するために、「GX実現に向けた基本方針」では徹底した省エネの推進、再エネの主力電源化、原子力の活用を挙げています。その他にも、水素の活用で世界をリードできるような国家戦略を策定しています。

GXとビジネスの関係とは
GXとビジネスの関係では、エネルギーの安定供給と脱炭素分野で新たな需要や市場を創出することで、日本の産業競争力強化や経済成長につなげていくことが、「GX実現に向けた基本方針」に記載されています。
経済成長を実現するために政府が2023年に表明したのが、今後10年間で官民合わせて150兆円を超えるGX投資を実行することです。「成長志向型カーボンプライシング構想」として、4つの柱による政策があります。
4つの柱は、GX経済移行債、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用、それに国際戦略・公正な移行・中小企業等のGXです。日本政府による戦略について詳しくみていきましょう。
日本政府のGXの取り組みとは
GX経済移行債とは
GX経済移行債は、カーボンニュートラルや二酸化炭素排出量の削減目標を達成するために、国による支出を確保する目的で発行する国債です。10年間で20兆円規模を見込んでいます。2023年度に1.6兆円、2024年度に1.4兆円が発行されました。
10年間で20兆円に及ぶ政府資金を呼び水にして、官民合わせて150兆円を超えるGX投資につなげるのが狙いです。次世代の省エネ半導体開発や、製造業の燃料転換、再生可能エネルギーの拡大などに資金を活用します。
GX経済移行債の償還には、排出される二酸化炭素に価格を付ける、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブが活用されます。発電事業者に二酸化炭素の排出枠を割り当てて負担金を徴収することや、化石燃料の輸入企業に輸入する燃料の二酸化炭素量に応じて賦課金を求める仕組みによって、徴収した負担金や賦課金を償還財源に回します。
また、新たな金融手法の活用では、GX技術を社会実装する段階で、債務保証などのリスク補完策を実施することなどを目指しています。国際戦略・公正な移行・中小企業等のGXでは、アジアのGXを推進するとともに、労働者の成長分野への円滑な移転や、中小企業支援機関の人材育成などを実現する計画です。
GX推進戦略とは
「GX実現に向けた基本方針」に基づいて策定された日本政府の戦略は、脱炭素成長型経済構造移行推進戦略=GX推進戦略として2023年7月に閣議決定されました。
さらに、GX推進戦略を中長期の視点から2025年2月に改訂し、閣議決定されたのが「GX2040ビジョン」です。対象期間が2030年から2040年までに広がり、2040年を見据えた産業立地策や制度などが新たに盛り込まれました。
つまり、GX推進戦略から、GXを進める上での政策がより具体化されたのが「GX2040ビジョン」になります。
GXリーグとは
GXの一環で進められている取り組みに、GXリーグがあります。GXリーグは野心的な二酸化炭素削減を掲げる企業群が、排出量削減に向けた投資を行いながら、自主的な排出量取引を行う枠組みです。参加企業は2024年3月の時点で747社にのぼります。
自主的な排出量取引では、参加企業は高い目標を自主的に掲げて、その達成に向けた取り組みの推進や開示を行うとともに、自主的な排出量取引のGX-ETSに参加します。取引では、排出量が多い企業が排出量の少ない企業から排出権を購入することによって、排出量を削減できます。
GXリーグの排出量取引を推進するためには、排出削減量を企業間で売買できるカーボン・クレジット市場が不可欠です。2023年度からGXリーグの試行的な運用が始まったことを受けて、東京証券取引所は2023年10月にカーボン・クレジット市場を開設しました。この市場には、GXリーグに参加している企業以外も参加できます。排出量取引の本格稼働は2026年度を目指しています。
GXの取り組みを成功させるためには、企業活動の脱炭素化を進めることが不可欠です。企業がCO₂の排出量を簡単に削減する方法に、再生可能エネルギーによる電力への切り替えがあります。
エバーグリーンでは、電力使用によるCO₂の排出量がゼロになるCO₂フリープランを提供しています。再生可能エネルギーを電源として発電され、固定価格買取制度によって電力会社に買い取られたFIT電気と、環境価値をもつ非化石証書を利用して、実質的に再生可能エネルギ-100%での調達を実現しています。RE100や、気候変動や水などの環境分野に取り組む国際イニシアチブのCDPへの報告にも活用できます。
CO₂フリープランを利用するには設備投資などは必要なく、プランの申し込みだけで手軽に切り替えることができます。GXの取り組みを検討している企業は、まずCO₂フリープランなどで電力使用によるCO₂排出ゼロから取り組んでみてはいかがでしょうか。