なぜ企業に地球温暖化対策の取り組みが求められるのか
日本の温室効果ガス排出量と企業の取り組み
環境省によりますと、2022年度における国内の温室効果ガス排出量は約11億3500万トンでした。これは前年度に比べると2.5%減少していて、2013年度に比べると19.3%減少しました。
温室効果ガスのうち、最も多くを占める二酸化炭素についてみてみましょう。2022年度の排出量は10億3700万トンで、前年度よりも2.5%減少しました。2013年度に比べると21.3%減少しています。
2022年度の二酸化炭素排出量を部門別にみると、産業部門は約1970万トン、運輸部門は約720万トン、商業・サービス・事業所などの「業務その他」部門は約790万トン、家庭部門は約220万トンとなっています。
部門別の排出量を見ると、二酸化炭素の排出量の大半は、企業活動によるものだということがわかります。つまり、企業からの排出量が削減できれば、国全体の排出量を大きく減らすことにもつながります。
実際に、2022年度の二酸化炭素排出量が2013年度と比べて21.3%も減少したのは、企業の努力によるところが大きくなっています。主な要因の1つは省エネなどによるエネルギー消費量の減少。もう1つは再生可能エネルギーの拡大などに伴う電力の低炭素化によって、電力由来の二酸化炭素排出量が減少したことでした。

日本のカーボンニュートラルの目標と企業に求められる地球温暖化対策の取り組み
日本政府は2050年にカーボンニュートラルの達成を目指しています。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて、排出を実質ゼロにすることです。実現のためには、温室効果ガスの排出量を削減するとともに、温室効果ガスを吸収する森林などを保全することが必要です。
また、政府は二酸化炭素の排出量については、2030年度までに2013年度に比べて46%削減し、さらに50%削減の高みに向けて挑戦することを掲げてきました。さらに、2025年2月には新たな削減目標として、2035年度までに2013年度に比べて60%削減する目標を決定し、を国連に提出しました。
ただ、この目標について、企業や研究者などからは「パリ協定」で掲げる世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑える目標を達成するには、2013年度比で66%の削減が必要だとする指摘もあります。とはいえ、2035年度までに60%削減を実現すること自体、現状から考えると高いハードルとなっています。カーボンニュートラルの達成も、二酸化炭素排出量削減の目標達成も、企業による地球温暖化対策や脱炭素経営が不可欠です。
SDGsと企業の地球温暖化対策の取り組み
先進国だけでなく発展途上国も含めて進めている取り組みに、持続的な開発目標のSDGsがあります。SDGsは2015年に国連で加盟国の全会一致によって採択されたもので、環境や経済、社会についての問題を解決し、世界全体で2030年を目指して明るい未来をつくる17のゴール(目標)と、169のターゲットによって構成されています。
SDGsのゴールには、企業活動と関係するものも少なくありません。地球温暖化対策についてはゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」があります。また、環境を守る取り組みについては、ゴール14「海の豊かさを守ろう」、ゴール15「陸の豊かさも守ろう」などがあります。
ビジネスの世界では、SDGsはすでに共通言語になっています。経営にSDGsを取り入れて、自社のビジネスの持続可能性を追求することによって、市場や取引先、さらには投資家からもプラスの評価を得ることができます。特に地球温暖化対策などの社会課題に取り組むことは、企業イメージの向上や地域での信頼獲得にもつながります。
企業が地球温暖化対策を進めるための具体的な取り組み
企業の地球温暖化対策としての再生可能エネルギーの活用
企業が地球温暖化対策に取り組む際に、代表的な手法の1つが再生可能エネルギーの活用です。具体的には従来の化石燃料由来のエネルギーによる電力に代わって、太陽光、風力、地力、水力、バイオマスなどのエネルギーによる電力を導入することです。
日本国内では再生可能エネルギーのうち、特に太陽光発電の導入が増加傾向にあります。2023年の国内での電力需要における太陽光発電の割合は10.7%でした。太陽光発電は導入コストが低下しているほか、施工期間が短いなどのメリットがあることから、今後も導入が進むと見られています。

企業が太陽光発電を導入する場合には、自社の敷地内や建物の屋根などを活用して導入する方法と、敷地外で太陽光発電を導入する方法があります。この2つの方法では、企業が自ら発電設備を導入して、発電した電力を自社で消費することになります。
企業の電力の最適化と省エネ対策の取り組み
企業が地球温暖化対策に取り組む手法は他にもあります。一つは電力の最適化です。電力の最適化とは、電力の需要と供給のバランスを調整して、電力の消費量を効率化することです。さまざまな物をインターネットに接続するIoT技術を活用することで、電力の使用状況をリアルタイムで監視して、無駄を削減することができます。
また、省エネも地球温暖化対策に取り組む企業にとって有効な手法です。省エネは二酸化炭素排出量の削減につながるだけでなく、自社のエネルギーにかかるコストを抑えるメリットもあります。
省エネに取り組む場合は、やみくもに進めるのではなく、次のような順序で進めることで効果が得られます。まず、現状を知ること。どのエネルギーを、どれだけ、どのように使っているのかを把握します。次に、削減対策と目標を考えます。どのような方法で、どれだけ削減するのかを決めます。ここまで決まれば、実行し、結果を把握・分析し、さらなる目標や改善策を考えていきます。
省エネには設備投資が必要と考えて、躊躇している経営者もいるでしょう。ただ、省エネはできることから始めることが重要です。使っていない場所の照明や空調を消す、蛍光灯を1本間引く、ガソリン車からハイブリッド車や軽自動車に買い換えるなど、少しずつやってみて効果を測定してみてはいかがでしょうか。
企業の地球温暖化対策とカーボンクレジット
温室効果ガス排出量の削減に取り組んだ企業が、現状ではこれ以上は減らせないとなった場合には、カーボンクレジットを活用する方法があります。
カーボンクレジットは、温室効果ガスの削減量や排出権を企業間で売買できる仕組みのことです。バイオマスボイラーや太陽光発電設備の導入、森林の管理などのプロジェクトを対象に、そのプロジェクトが実施されなかった場合の温室効果ガスの排出量及び除去量の見通しと、実際の排出量の差分について、測定、報告、検証のプロセスを経て、国や企業などの間で取引ができるように認証します。
カーボンクレジットを購入することで、購入した分だけ温室効果ガスの排出量が削減されます。この取引はカーボンオフセットと呼ばれています。企業がカーボン・クレジットを活用することによって、企業から支払われた代金がプロジェクトを実施している森林保全活などの資金になるなど、地域の活性化にもつながります。

企業の地球温暖化対策の取り組みはビジネスチャンスになる
政府によるGX推進戦略と企業の地球温暖化対策の取り組み
政府も地球温暖化対策を政策として進めています。経済産業省は、化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動をGX(グリーントランスフォーメーション)と名づけました。
このGXを通じて脱炭素、エネルギーの安定供給、経済成長の3つを同時に実現しようとGX推進戦略(脱炭素成長型経済構造移行推進戦略)を定めて、さまざまな施策を進めています。
GX推進戦略の中でも大きな取り組みが、成長志向型カーボンプライシング構想です。2032年までの10年間に、GXを目指す取り組みに対して官民合わせて150兆円を超える投資を実現することを掲げています。国がGX経済移行債を創設して、20兆円の先行投資を進めるほか、炭素の排出に値付けするカーボンプライシングによって、企業が排出量を取引できる仕組みづくりを行なっています。
企業の地球温暖化対策の取り組みに活用できる補助金
こうした施策と合わせて、環境省などでは地球温暖化対策に取り組む企業などを対象にした補助金や委託事業を用意しています。
「民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業」は、企業による自家消費型、もしくは地産地消型の再生可能エネルギー導入を促進するものです。
また、「商用車等の電動化促進事業」では、トラック、タクシー、バス、建設機械などの電動化を支援します。これらの補助事業は、他の省庁とも連携して実施されています。
補助金の一覧については、環境省のホームページで公開されています。
環境省|令和7年度予算(案)及び令和6年度補正予算 脱炭素化事業一覧
https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/2025
企業の地球温暖化対策の取り組みに最適な電力プランの切り替え
最後に、企業が地球温暖化対策に取り組む際に、簡単始めることができる方法をお伝えします。
1つは現在使用している電力を、再生可能エネルギーによる電力プランに切り替えることです。この方法は、現在の電力契約を小売電気事業者が提供する再生可能エネルギー電力プランに切り替えるだけなどで、大きな設備投資などは必要ありません。
もう1つが、再生可能エネルギー電力証書の購入です。これは電力とは別に、再生可能エネルギーによる電力の環境価値だけを証書として購入する方法です。購入できるものには再エネ電力J-クレジットやグリーン電力証書、それに非化石証書などがあります。電力契約を変える必要もなく、すぐに導入できます。
エバーグリーンでは環境価値を持つ非化石証書を組み合わせることで、実質的に再生可能エネルギーを提供するCO₂フリープランを用意しています。詳しくはこちらをご覧ください。