第7次エネルギー基本計画とは? 企業が知っておくべきポイントをわかりやすく解説

ビジネス関連
2025年6月1日

政府は第7次エネルギー基本計画を2025年2月に閣議決定しました。2040年度の温室効果ガス排出量を2013年度に比べて73%削減することや、電源構成の約7割を再エネと原子力で占めるなどの目標が盛り込まれました。第7次エネルギー基本計画について、企業が知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。

目次

第7次エネルギー基本計画とは

第7次エネルギー基本計画の概要は

エネルギー基本計画は、少なくとも3年ごとに検討を加えて、必要に応じて見直されることになっています。第6次エネルギー基本計画は2021年10月に閣議決定されたもので、その後のエネルギー問題を反映した第7次エネルギー基本計画が、2025年2月に閣議決定されました。

第7次エネルギー基本計画では、エネルギー政策の原点に「東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むこと」を明記。その上で、安全性(Safety)、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合性(Environment)の「S+3E」を原則としながら、安全性を大前提に、エネルギー安定供給を第一として、経済効率性の向上と環境への適合を図ることにしています。

第7次エネルギー基本計画と第6次との違いは

第6次エネルギー基本計画が策定されて以降、国内外のエネルギー情勢は大きく変化しました。変化の一つは、経済安全保障上の要請が高まったことです。2022年2月には、ロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。ロシアへのエネルギー依存度を高めていたヨーロッパの国々が、ロシア産のガスから脱却する方針を示したことから、短期的なエネルギー需給バランスが崩れて、アジア市場でも液化天然ガス(LNG)の価格が高騰しました。

また、2023年10月からは、パレスチナのガザ地区を支配するイスラム組織ハマスと、イスラエルによる大規模な戦闘も始まりました。中東は海上水路が集結するエリアであり、紅海ではイエメンの親イラン武装組織フーシ派による船舶攻撃も行われるなど、原油の約9割を中東から輸入している日本のエネルギー安全保障に大きな影響を及ぼしています。

もう一つの大きな変化は電力需要の増加です。日本政府は、化石燃料が中心となっている経済や産業の構造をクリーンエネルギー中心の構造に移行するグリーントランスフォーメーション(GX)や、データやデジタル技術を使って新たな価値を創出するデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。また、生成AIの進化によって、大量の電力を消費するデータセンターが拡大する傾向にあります。これらの要素から、今後電力需要の増加が見込まれています。

こうした変化を踏まえて、エネルギー構造転換を経済成長につなげる政策を強化したのが第7次エネルギー基本計画です。

第7次エネルギー基本計画と予想される電力需要の増加

第7次エネルギー基本計画では、2040年度のエネルギー需給の見通しを示しています。不確実性が存在することを念頭におきながら、複数のシナリオを用いた上で、一定の幅で提示しています。

まず、発電電力量を見てみましょう。2040年度の発電電力量は、1.1兆から1.2兆kWh程度と想定されています。2023年度の発電電力量が速報値で9854億kWhだったことから、電力需要は2割程度増えるものと見られています。

(図)2040年度におけるエネルギー需給の見通し(資源エネルギー庁・2025年2月)

第7次エネルギー基本計画と2040年度の電源構成の方向性

第7次エネルギー基本計画と2040年度の電源構成

続いて、電源構成を見ていきましょう。電力需要が2023年度よりも2割程度増えることを前提に、2040年度の電源構成が想定されています。特に再生可能エネルギーについては、全電源に占める割合を2023年度の22.9%から、4割から5割程度まで引き上げることが盛り込まれました。第6次エネルギー基本計画では、2030年度に36~38%を見込んでいました。さらに引き上げることで、2040年度には最大の電源に位置付けられています。

2023年度時点では68.6%を占めて最大の電源となっている火力については、3割から4割程度に割合を下げる一方で、2023年度に8.5%だった原子力を、2割程度に引き上げました。この電源構成によって、エネルギー自給率を2023年度の15.2%から、3割から4割程度に引き上げたい考えです。

第7次エネルギー基本計画に盛り込まれた再エネなど脱炭素電源の拡大

再生可能エネルギーの電源構成を大幅に引き上げた背景には、脱炭素電源の拡大が急務となっている点があります。

政府は二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて、排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを、2050年までに実現することを目指しています。また、2025年2月には国の温暖化対策計画を決定し、温室効果ガスの排出量を2013年度に比べて2030年度に60%、2040年度に73%削減する目標を盛り込みました。

この目標を達成するには、国産の再生可能エネルギーを拡大することが欠かせません。2040年度の電源構成では、2023年度と比較して、太陽光を9.8%から23~29%程度、風力を1.1%から4~8程度、水力を7.6%から8~10%程度、地熱を0.3%から1~2%程度、バイオマスを4.1%から5~6%程度に拡大しています。

太陽光の拡大については、現在開発が進められているペロブスカイト太陽電池への期待があります。これはペロブスカイトと呼ばれる特殊な結晶構造を持つ材質を使った次世代の太陽電池で、現在主流となっているシリコン型太陽電池と比べて軽量で製造工程が少なく、薄くて軽いフィルム型など3種類があります。原料となるヨウ素の生産量は日本が世界第2位を誇ることから、早期の実用化と量産化を実現することで、社会実装を進めていく方針です。

第7次エネルギー基本計画における原子力の位置付け

第7次エネルギー基本計画が、第6次と大きく異なる点は原子力の位置付けです。2023年度が8.5%だったのに対して、2040年度には20%を見込んでいます。この割合自体は、第6次エネルギー基本計画で想定していた2030年度に20~22%と同じ水準を維持しています。

一方で、福島第一原子力発電所の事故以降、第6次エネルギー基本計画まで記載されていた「可能な限り依存度を低減する」との文言が削除されました。これは、脱原発を目指してきた従来の方針から大きく転換しています。その上で、次世代革新炉の開発や設置、建て替えなどを進めていくことが盛り込まれています。

第7次エネルギー基本計画の課題と企業に求められる対応

第7次エネルギー基本計画と水素などの次世代エネルギー導入

第7次エネルギー基本計画では、次世代エネルギーの確保も掲げています。次世代エネルギーには、水素、アンモニア、合成メタン、合成燃料などがあります。

水素については、水素の供給や利用を早期に促進するため、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律」、いわゆる水素社会推進法が2024年10月に施行されました。

基本計画では、この水素社会推進法に基づいて、水素の社会実装に向けてコストの低減と利用の拡大を両輪で進めていくことにしています。

第7次エネルギー基本計画の課題は

第7次エネルギー基本計画は、再生可能エネルギーを最大限導入することや、バランスの取れた電源構成を目指す点では、野心的な計画とも言えます。

ただ、国内のエネルギー価格は、化石燃料の輸入価格が高騰していることから、高止まりの状況が続いており、電気料金も高騰しています。この点に対する具体的な見通しなどについては、特に触れられていませんでした。

また、再生可能エネルギーを4割から5割程度に引き上げて、最大の電源に位置付けてはいるものの、2030年までに再生可能エネルギーの発電量比率80%を目指しているドイツや、72%を目指すイタリアなど、ヨーロッパの国々に比べると再生可能エネルギーの拡大が遅れていることは否めません。火力を高い割合で維持する点についても、日本の産業競争力にとってはマイナスに働く可能性もあります。

第7次エネルギー基本計画で求められる企業の対応は

以上の課題はあるものの、第7次エネルギー基本計画に盛り込まれた再生可能エネルギーの拡大を実現するためには、企業の取り組みが欠かせません。

企業は再生可能エネルギーの導入や、徹底した省エネルギーの取り組み、それにエネルギーマネジメントを強化することなどによって、持続可能なビジネスを展開していく必要があります。

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