非化石証書と取引価格
非化石証書の価格の仕組みとは
非化石証書は、CO₂を出さない電気が持つ環境価値の一つである非化石価値を取り出して、証書の形で売買を可能したものです。
CO₂を出さない電気は、再生可能エネルギーや原子力発電などの非化石電源によって作られます。化石燃料を使った発電に比べてCO₂の排出量が少ないことから、非化石証書はCO₂を出さない電源を支援することにもつながる仕組みといえます。
非化石証書は、2018年5月から非化石価値取引市場で取引されるようになりました。非化石電源を使って電気をつくる発電事業者は、非化石証書を取引市場でオークションにかけます。このオークションによって価格が決まることになります。

非化石証書の取引方法と価格
非化石証書を取引する非化石価値取引市場は、再生可能エネルギーの環境価値を取引する再エネ価値取引市場と、エネルギー供給構造高度化法(高度化法)義務の達成に向けた取引が行われる高度化法義務達成市場に分かれています。
再エネ価値取引市場は、小売電気事業者とともに、再生可能エネルギーの環境価値を必要とする需要家も直接購入することが可能です。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)に基づいて、発電された電力の環境価値を証明するFIT非化石証書は、2023年8月以降最低価格が0.4/kWhとなっています。
一方、高度化法義務達成市場は、高度化法に基づいて、小売電気事業者が非化石電源比率目標を達成するために利用するものです。小売電気事業者は非化石証書を購入することで、自社の非化石電源比率を向上させることができます。
非化石証書とJ-クレジットの違いと価格
非化石証書以外にも環境価値を取引する証書があります。それはJ-クレジットです。J-クレジットは、省エネルギー設備や再生可能エネルギーの導入、森林管理によるCO₂の排出削減量や吸収量をクレジットとして認証して、取引する制度です。
J-クレジットがどんな事業者でも創出ができるのに対して、非化石証書は発電事業者しか創出できません。また、非化石証書には有効期限がありますが、J-クレジットには期限がありません。非化石証書は購入した法人に対してのみ使用できますが、J-クレジットは転売が可能な点も大きな違いです。
価格に関しては、非化石証書の方がJ-クレジットよりも価格水準が低くなっています。前述したFIT非化石証書の最低価格が0.4円/kWhとなっているのに対し、J-クレジットの再生可能エネルギー発電の入札結果を見ると、2023年5月は1.66円/kWhと高い水準にあります。J-クレジットの価格は長期的に見て上昇傾向にあります。
非化石証書の価格動向は
FIT非化石証書の取引価格は
非化石証書を購入する場合には、一般社団法人日本卸電力取引所(JPEX)の非化石価値取引を利用することになります。利用するためには非化石価値取引の会員になる必要があります。2024年度の年会費は60万円で、売買手数料は0.001円/kWhです。
非化石証書には、FIT非化石証書(再エネ指定)、非FIT非化石証書(再エネ指定)、非FIT非化石証書(再エネ指定なし)の3種類があります。それぞれの特徴についてみていきます。
まず、FIT非化石証書は、再エネ価値取引市場で取引される証書です。取引の対象となるのはFIT電源で、再生可能エネルギーで作られた電気を使いたいと考える需要家のニーズに対応するものです。
再エネ価値取引市場で行われるオークションの形式は、複数の価格で取引が行われるマルチプライスオークションです。小売電気事業者の入札価格によって、FIT非化石証書の価格が決まります。

非FIT再エネ指定の非化石証書取引価格は
非FIT再エネ指定ありの非化石証書は、高度化法義務達成市場で取引されます。対象となるのは、FIT制度の買い取り期間が終了した太陽光発電設備などの卒FIT電源や、大型水力、バイオマスなどによる電源です。
高度化法義務達成市場のオークションの形式は、シングルプライスオークションです。売り手と買い手がそれぞれ入札を行い、条件が一致して売買が成立した約定価格で、全ての参加者が取引します。
非FIT再エネ指定の非化石証書は、購入対象者が基本的には小売電気事業者のみとなっていますが、一定の条件を満たすことで需要家も購入できるようになります。
非FIT再エネ指定なしの非化石証書取引価格は
非FIT再エネ指定なしの非化石証書も、高度化法義務達成市場で取引される証書です。取引の対象となるのは原子力やごみ発電など、再生可能エネルギーに当てはまらない非化石のエネルギー源になります。
高度化法義務達成市場のオークション形式は、すべてシングルプライスオークションとなっています。
非化石証書価格の今後の見通し
非化石証書価格の最新動向は
非化石証書価格の動向は、証書の種類によって状況が異なります。FIT非化石証書価格の場合、最低価格は0.4円/kWhで一定ですが、約定最高価格は2025年に入って上昇しています。
JPEXによりますと、2024年11月のオークションでは、約定最高価格は0.6円/kWhでした。それが、2025年2月のオークションでは1.00円/kWhに上昇し、さらに2025年5月には4.00円/kWhに急騰しました。
当日の取引所で成立した価格を、価格ごとの出来高で加重平均した約定加重平均価格は、5月のオークションで過去最高の0.67円/kWhとなっています。
一方、非FIT再エネ指定ありの約定価格は、2024年11月が0.60円/kWhだったのに対し、2025年2月と5月は1.30円/kWhと、こちらも2025年に上昇しました。非FIT再エネ指定なしの価格も、同様の価格になっています。2025年に入ってからのオークションでは、売入札量が極端に少なくなったことで、大半が未約定となりました。
非化石証書価格の今後の見通しは
非化石証書価格は、市場における需要と供給のバランスによって変動します。今後は需要の高まりと供給の制約などから、価格は上昇する可能性が高いとみられています。
FIT非化石証書の供給量は、FIT制度で定められた期間に発電された再生可能エネルギーによる電力に紐づくため、限りがあります。
2030年に向けて再生可能エネルギーの導入が進むと見られることから、非化石証書の需要はさらに高まり、価格上昇が加速する可能性があります。
非化石証書価格と企業の対応は
再生可能エネルギーの導入を進めている企業は、2030年に一定の目標を定めているケースが多くなっています。そのため、再生可能エネルギーの導入を非化石証書だけに頼ると、非化石証書価格の変動リスクの影響を受ける可能性があります。
企業は非化石証書だけでなく、トラッキング付き非化石証書や、グリーン電力証書など、複数の調達方法を検討することが、今後に向けて重要になってきます。また、再生可能エネルギーによる発電設備を導入することによって、自社で環境価値を生み出すことも、選択肢の一つと言えます。

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