力率とは
力率の定義とは
力率は電気で動く機器や照明器具などを使用する場合に、送られてきた電力が無駄にならずに実際に働いた割合のことです。電気回路が有効電力を効率的に使用しているのかどうかを示す指標になります。通常、力率は0から1の範囲で表され、1に近いほど効率が高いことを示します。直流回路では力率は1になりますが、交流回路では力率が変動します。
交流回路の場合、電力は有効電力、無効電力、皮相電力の3つに分類できます。有効電力は発電所から供給された電力のうち、実際に負荷で消費される電力のことです。これに対して無効電力は、発電所から供給された電力のうち、コイルやコンデンサの影響による負荷に由来した消費されない電力です。皮相電力とは、発電所から送られてくる電力の総量のことを指します。
つまり、力率が1に近くなるほど、無効電力の割合は低くなります。力率を説明する際によく使われる例が、ビールのジョッキです。ジョッキ全体を皮相電力とすると、ビールの中身のうち液体部分が有効電力で、注いだときにできる泡が無効電力にあたります。泡が多くなると実際に飲めるビールが少なくなるのと同様に、無効電力の割合が高くなると、有効電力の割合が低くなって、電力の損失が大きくなるのです。

力率と電気料金の関係は
力率は電気料金にも影響します。電気料金の請求では、力率割引や力率割増が適用されていることがあります。特に法人向けの高圧電力や特別高圧電力の場合、力率割引を利用できる電力会社が一般的です。
力率割引は1か月の平均力率が85%を超える場合に、超えた分だけ電気の基本料金が割引されるものです。高圧電力や特別高圧電力では、力率を1%改善すると、基本料金が1%割引されます。逆に力率割増では、平均力率が85%を下回る場合に、下回った分だけ電気の基本料金が割増されることになります。
力率が低いと送配電網には多くの無効電力が必要になり、電力の無駄が生じます。このため電力会社では力率の改善を促すインセンティブとして、力率割引や力率割増を設けています。
力率は法人が見落としがちなコスト要因
力率が低くなる主な原因は、工場や事業所などで使われるモーターやトランスなど、コイルを内蔵し、電磁誘導によって機械的な動作などを発生させる電気機器にあります。モーターの負荷が軽い場合や多くのモーターを稼働させている場合、無効電力の割合が増加して、力率が低下しやすくなります。
このように力率は電気料金に影響するものの、気づいていない企業は少なくありません。電気料金の明細を見る時には、電力使用料と単価に注目していると思います。しかし、力率割増になっているのかどうかは、詳しく確認しなければ見落とす可能性があります。
力率割増分の料金は毎月継続的に発生するため、見落としたままでいると年間では無視できないほど大きなコストになります。このため、企業の担当者は力率について十分に理解しておく必要があります。

力率の算定方法は
力率の求め方と公式は
力率は前述したように、発電所から送られてくる電力の総量である皮相電力のうち、実際に負荷で消費される有効電力が占める割合です。
このため力率は簡単に説明すると、力率=有効電力÷皮相電力の式で求められます。
力率を算定する
力率を実際に算定してみましょう。皮相電力は法人の電力契約や、電気設備の容量を選定する際の基準になるのもので、単位はボルトアンペア(VA)で表されます。有効電力の単位はワット(W)です。
仮に、導入している装置の有効電力が600Wで、皮相電力が700VAとすると、力率は600(W)÷700(VA)=0.857になります。
力率割引と力率割増の計算式とは<
また、電気料金のうち、基本料金を求める式は次のようになります。
基本料金=基本料金単価×契約電力×(1.85-力率(%)÷100)
力率割引や力率割増を計算する補正係数に当たるのが、1.85-力率(%)÷100の部分です。1.85は、力率が85%(0.85)の時に計算結果が1になって、割引や割増がない状態にするために設定された数値になります。
力率が75%の場合、補正係数は1.85-75÷100=1.1になります。基本料金を求める式に当てはめると、基本料金=基本料金単価×契約電力×1.1となり、基本料金は1.1倍で、力率割増は10%です。
力率を95%で計算すると、補正係数は1.85-95÷100=0.9となることから、基本料金は基本料金単価×契約電力×0.9で、10%の力率割引となります。
以上のように、基本料金に力率が影響する契約を結んでいる場合は、力率は電気料金が変動する要因になります。基本料金の請求額が契約電力×基本料金単価と一致しないときは、力率割引か力率割増が適用されているとみられます。
実際に力率75%と95%では、基本料金に大きな差が出てきます。東京電力エナジーパートナーの料金を例に挙げると、毎月の契約電力が500kWの場合では、2025年4月1日時点の基本料金単価は1kWあたり1890円です。力率75%の場合には1890円×500×1.1=103万9500円となり、年間では1247万4000円になります。
それが、力率95%の場合には1890円×500×0.9=85万500円になり、年間では1020万6000円と基本料金を200万円以上抑えることができます。力率を改善するかしないかによって、年間の電気料金には大きな差が出てきます。
力率を改善する方法は
力率を改善するメリットとは
以上のように力率を改善することによって、電気料金の基本料金部分に力率割引が適用されるメリットがあります。
また、電気料金以外にも得られるメリットがあります。その一つは、電力消費を削減することです。力率を改善してエネルギー効率を高めることができれば、結果的に電力消費の削減につながります。
もう一つは、使用している電気機器や部品の寿命が延びることです。無効電力の割合を低くすることによって、電圧の変化に敏感な部品などの故障リスクを低減することが可能になり、機器や部品の寿命を向上させることができます。

コンデンサーを設置して力率を改善する
力率を改善するには、無効電力を低減する必要があります。その主な方法は、コンデンサーを設置することです。
主要な電気機器で無効電力が生じるのは、電圧に対して電流の変化が遅れる「遅れの無効電力」が一般的です。これに対して、進みの無効電力を発生させるコンデンサーを設置することで、無効電力を相殺して力率を改善することが可能になります。
力率割引以外に電力会社の見直しで電気料金を安くする
力率を改善して力率割引を受ける以外にも、電気料金を安くする方法があります。電気料金には基本料金のほかに、消費電力に基づく電力量料金も含まれていることから、設備を省エネ性能が高いものに更新することや節電に取り組むことで、消費電力を抑えて電気料金を安くすることができます。
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