電気代の節約と企業経営への影響
電気代の高騰と企業が節約する必要性は
日本国内では長期にわたって電気代が上昇傾向にあります。経済産業省資源エネルギー庁によりますと、2011年に東日本大震災が発生して以降、電気代は家庭向けと産業向けとともに上昇傾向が続いています。その原因は、福島第一原発事故による原子力発電所の運転停止による燃料費の増加や、世界的な燃料価格の高騰などさまざまです。
特に電気代が高騰したのが2022年でした。この年の2月にロシアがウクライナへの侵攻を始めたことで、天然ガスや石炭などの輸入コストが上昇しました。産業向けの電気料金単価は、同年には27.55円/kWhまで上昇しました。

(図)経済産業省資源エネルギー庁HPより
その後も円安によってエネルギーの輸入価格が上昇しています。政府は2023年以降、空白期間を置きながらも電気料金に対する補助金を出しているものの、依然として電気代は高い水準です。企業にとっては電気代を節約してコストを圧縮することは、経営面での課題となっています。
法人の電気代を節約するための基礎知識は
法人の電気代を節約するためには、まず電気代の内訳を知る必要があります。法人の電気代は、基本料金と電力量料金(電力量料金単価×電力使用料+調整費等)、それに再生可能エネルギー発電促進賦課金の合計によって算出されます。
このうち基本料金は、使用電力量に関係なく毎月請求される固定料金です。基本料金の計算式は次のようになっています。
基本料金単価(税込)×契約電力×(185-力率)/100
基本料金単価は、電力の供給会社ごとに異なります。契約電力は毎月の使用電力の上限です。契約電力が多くなればなるほど電気代は高くなるので、電気代を節約するためには契約電力を低水準にすることや、ピーク時の電力を下げる必要があります。
参照:『契約電力(kW)とは?アンペア(A)との違いや法人が知っておくべき基本と最適化ポイントを解説』
力率は送られてきた電力が無駄にならずに実際に働いた割合のことで、電気代に影響します。法人向けの高圧電力や特別高圧電力の場合、力率割引を利用できる電力会社が一般的です。力率割引は1か月の平均力率が85%を超える場合に、超えた分だけ電気代の基本料金が割引されます。高圧電力と特別高圧電力では、力率を1%改善すると、基本料金が1%割引されることから、法人が電気代を節約する場合に重要な指標となります。
参照:『力率とは?法人に必要な基礎知識や改善方法などを解説』
また、電力量料金は電気を使えば使うほど増えるため、電気代を節約するには使用電力量を減らす必要があります。例えば、燃料費等調整額は燃料費の変動によって加算や減額が行われます。再生可能エネルギー発電促進賦課金は、再生可能エネルギー発電促進賦課金単価×使用電力量によって算出されることから、節電することによって減らすことが可能になります。
法人の電気代の節約は、以上のような基礎知識を踏まえた上で進めていくことになります。
電気代を節約するための補助金などの制度は
電気代の節約につながる国の補助金制度には、前述の電気代支援の補助金のほか、省エネルギー投資促進に向けた支援補助金や、中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費などがあります。
資源エネルギー庁ではホームページで「省エネポータルサイト」を設置して、さまざまな支援制度を紹介しています。

(図)経済産業省資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」
電気代を節約する具体的な方法とは
電気代を節約する省エネルギーの方法とは
法人が電気代を節約するための代表的な方法が、省エネルギーに取り組むことです。一般的にオフィスビルでは、9時から19時頃に高い電力消費が続く傾向にあります。
資源エネルギー庁によりますと、オフィスビルの夏の17時頃の電力消費の内訳は、空調が約49%、照明が約23%で、両方を合わせると72%を占めています。つまり、空調と照明の省エネルギー化を進めることが有効といえます。

(図)経済産業省資源エネルギー庁「夏季の省エネ・節電メニュー」より
空調に関しては、設定温度を26℃から2度上げた場合、建物全体に対して約4%の節電効果があるとされています。もちろん、熱中症にならないように、無理のない範囲で室内温度を上げることがポイントです。また、日中の日射を遮るためのカーテンなどの設置や、セントラル空調の場合は冷凍機の冷水出口温度を高めに設定し、ターボ冷凍機やヒートポンプなどの動力を削減することも有効です。
照明の電気代を削減する際に効果が大きいのは、可能な範囲で照明を間引きすることです。使用していないエリアや廊下の消灯だけでも建物全体で約3%の節電効果があるほか、執務室の照明を半分程度間引きした場合には、12%以上の効果があると見られています。設備投資をする必要がないのも、省エネルギーに取り組むことのメリットです。
電気代の節約につながるデマンド監視装置の導入とは
製造業の場合は、電力消費の中で生産設備が占める割合が8割以上を占めることから、生産工程で節電することで大きな効果を上げることができます。

(図)経済産業省資源エネルギー庁「夏季の省エネ・節電メニュー」より
具体的には、交流の電圧や周波数を変換できるインバータ機能を持つポンプやファンの運転方法の見直しや、気体を圧縮して高い圧力を作ることでエネルギーを供給するコンプレッサやポンプ、ファンなどの台数を見直すことです。
電力使用量を制御することで電力需要のパターンを変化させるデマンドレスポンスも、電気代の節約に効果があります。デマンド監視装置を導入することで、あらかじめ決めておいた電力消費を上回りそうになるとアラートが出て、速やかに節電対策を実施できます。また、30分ごとの最大使用電力であるデマンド値を抑えることによって、最大需要電力を下げることが可能になり、電気代の基本料金を下げることも可能になります。
電気代を節約するための再生可能エネルギーの活用とは
業種に限らず電気代を節約する方法に、再生可能エネルギーの活用があります。導入しやすいのは、太陽光発電設備と蓄電池を活用することです。
日中に発電した電気を自家発電することで、電力会社から購入する電気量を減らすことができます。余剰電力を蓄電池に貯めておくことで、天気の悪い日や夜間にこの電力を使用することによって、さらに電気代を節約できます。
ただ、太陽光発電設備や蓄電池の導入には初期費用がかかります。電気代の節約効果と合わせて長期的なシミュレーションをした上で検討することが重要です。
電気代の節約を電力契約の面から検討するには
電気代が安い時間帯に稼働して節約する方法
電力契約の面から電気代を節約する方法もあります。ひとつは、電力の消費量が多い時間帯から、電気代が安い夜間や早朝にシフトすることです。
一般的に電力会社では、電力需要が少ない深夜から早朝にかけての時間帯に電気代が安くなる、時間帯別のプランを用意しています。
電気代を節約する契約電力の最適化
電力契約の面から電気代を節約するもうひとつの方法は、契約電力を最適化することです。
前述した省エネルギーやデマンド監視装置などを導入することによって、基本料金を下げることや、電気を使えば使うほど増える電力量料金などを抑えることができます。
最大需要電力を下げることができれば、その後1年間の電気料金を大幅に削減することも可能になります。自社にあった最適化の方法を検討してみてください。
電気代を節約する電力会社や電力プランの見直し
手軽に電気代を節約したいと考える場合は、電力会社や電力プランの見直しも有効な方法です。エバーグリーンでは親会社のイーレックスと共に、特別高圧や高圧で契約する法人のお客様向けに、デマンドレスポンス(DR)サービスを提供しています。
また、電力市場価格は夜間より昼間の電力が安くなる傾向にあることから、昼間に電気を多く使う法人さまにおすすめの市場連動型プランや、長期的に再生可能エネルギー電源を確保できるコーポレートPPAなど、お客様の事業形態にあわせた多彩なプランを用意しています。詳しくはこちらをご覧ください。
