※この記事は2022年7月27日に公開した記事ですが、文言やデータなどを追記・更新して、2025年5月5日に再度公開しました。
グリーン・ニューディールとは
グリーン・ニューディールは米国発の政策
グリーン・ニューディール(GND)とは、米国で気候変動問題と経済格差の是正を目的に提唱された経済刺激策を指します。1929年の世界恐慌からアメリカ経済の救済を図るべく、当時の大統領だったフランクリン・D・ルーズベルトが行ったニューディール政策を、再生可能エネルギー、資源効率など今日の環境問題に対する取り組みを掛け合わせた政策です。
グリーン・ニューディールは、元々オバマ政権発足に先立って10年間で1,500億ドルの再生可能エネルギーへの投資や500万人のグリーン雇用の創出を掲げており、これを総称して「グリーン・ニューディール」と呼んでいました。しかし2019年2月に、当時史上最年少で当選したオカシオ=コルテス下院議員やエド=マーキー上院議員らによって新たなグリーン・ニューディール決議案が発表されました。
グリーン・ニューディール決議案では、
・温室効果ガス排出ゼロ
・電力の100%再生可能エネルギー化
・気候変動などによる災害への強靭性構築
・ゼロ・エミッション車や公共交通への投資・交通システムの抜本的な見直し
・強力な雇用・環境保護を伴う国境調整、調達基準、貿易ルールの採択及び執行
等が主な政策の柱となっており、気候変動対策に加えて国民の雇用やヘルスケアなど貧困層への対策も同時に行うことを重要視しています。
米バイデン政権下のグリーン・ニューディール政策
また、2021年1月から2025年1月までのバイデン政権が掲げた公約は、地球温暖化対策を重要視するものでした。
実際にホワイトハウスに「気候変動国内対策室」や「ホワイトハウス環境正義諮問」の新設、関係閣僚からなる「国家気候タスクフォース」の設立など、気候変動問題に積極的に取り組む姿勢を見せました。2022年には脱炭素投資を減税等で支援するインフレ削減法をなど制定し、国内の電気自動車やバッテリー産業の振興を図りました。
ただ、バイデン氏は次の大統領選からの撤退を表明し、2024年の大統領選ではトランプ氏が返り咲き当選。第2次トランプ政権が2025年1月に発足したことで、グリーンニューディール政策は頓挫します。
トランプ政権はグリーン・ニューディール政策を終了
トランプ氏の大統領就任式が2025年1月20日に行われると、トランプ氏はエネルギー政策に関する5本の大統領令に署名しました。このうち、「米国のエネルギーを解き放つ」と題された大統領令には、グリーン・ニューディールの終了が打ち出されました。
その中には、インフレ削減法などに割り当てられた資金の支出の即時停止や、補助金の見直しなどのほか、液化天然ガスを迅速に輸出させるための措置などが盛り込まれています。
また、大統領令には洋上風力発電リースからの一時的な撤退、政府の風力発電プロジェクトに対するリースや許可慣行の見直しなどもありました。以上のように2025年4月現在、アメリカのグリーン・ニューディール政策はストップしています。
グリーン・ニューディールと日本国内の動向
グリーン・ニューディールと日本のカーボンニュートラル宣言
グリーン・ニューディールは先に述べた通り、経済政策と環境政策の複合的な効果を期待するものです。日本では未だ馴染みのない言葉ですが、日本は経済政策と環境政策について、どのような方針なのでしょうか。
日本政府は2020年10月に、2050年にカーボンニュートラルの実現を目指すことを表明しました。脱炭素社会を実現することによって、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につなげることを目指しています。
グリーン・ニューディールと日本のG X推進戦略
ただ、日本が2050年にカーボンニュートラルを達成するためには、大きな課題があります。それは、日本の温室効果ガスの排出量は、産業界で大きな排出量削減ができなければ、達成は厳しい状況となっていることです。
国立研究開発法人国立環境研究所が2022年4月に発表した日本の温室効果ガス排出量データ(1990年~2020年度)確報値によると、経済活動において最も温室効果ガスの直接排出量が多いのはエネルギー転換部門(40.4%)です。続いて、産業部門(24.3%)、運輸部門(17.0%)となっています。
日本の再生可能エネルギー導入の現状
一方で、日本は再生可能エネルギーの導入が、主要国の中で遅れている状況です。2019年度の再エネ電力比率は18%(2019年度)でした。背景には、ASG(アジアスーパーグリッド)※等をはじめとする国際的な電力グリッドを持っていない為、日本国内で需給調整をする必要があることや、再エネの発電コストが国際水準と比較して高いことなどが挙げられます。
高コストな電源を使うということは、当然電気料金の価格高にも繋がるため、日本経済を後退させる一因にもなりかねます。
※ASG(アジアスーパーグリッド):アジア各地に豊富に存在する太陽光、風力、水力などの自然エネルギー資源を、各国が相互に活用できるようにするため、各国の送電網を結んでつくりだす国際的な送電網。
■主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較
(発電電力に占める割合)
こうした状況を受けて日本政府は、2050年カーボンニュートラルの実現を目指すとともに、化石燃料中心の経済、社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させて、経済社会システム全体を変革するGX(グリーン・トランスフォーメーション)を実行しようと、2022年7月にGX実行会議を設置しました。
さらに「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」、いわゆるGX推進戦略を策定し、2023年7月に閣議決定しました。
GX推進戦略では、主に2点の取り組みを進めています。1点目は、エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再生可能エネルギーや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換など、GXに向けた脱炭素の取り組みを進めることです。
2点目は、GXの実現に向けて、GX経済移行債等を活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用などを含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現と実行を行うことです。いずれも基本方針に沿った戦略になっています。
日本と海外におけるグリーン・ニューディールの今後は
日本の「地域グリーン・ニューディール基金」とは
グリーン・ニューディールは日本全体では導入されていませんが、2009年度の第1次補正予算で「地域グリーン・ニューディール基金」が環境省によって創設され、一部の地方自治体では、既に活用が進んでいます。
地域グリーン・ニューディール基金とは、地球温暖化等の喫緊の環境問題を解決するために必要不可欠な地域の取り組みを支援し、当面の雇用創出と持続可能な地域経済社会の構築のための中長期的な事業を実施するため、都道府県及び政令指定都市に補助金を交付し、基金造成を促すものです。
「地域グリーン・ニューディール基金」の対象事業は
対象となる事業は、各自治体の公共施設や民間事業者の施設、設備について、複数の省エネ技術を組み合わせて効果的に実施する省エネ改修事業や、アスベスト廃棄物の処理施設の整備、海岸漂着物の回収・処理や発生源対策等に係る事業等です。
徳島県では、この地域グリーン・ニューディール基金を活用して、過去に県が管理する国定公園や県立自然公園にLEDとソーラーパネル一体型の街路灯を設置したり、歩行者用信号機のLED化等を実施しました。
また、宮城県では東日本大震災を契機に、再エネ等の地域資源を活用した災害に強い自立・分散のエネルギーシステムの導入、環境先進地域づくりを目的としたグリーン・ニューディール基金を創設し、地域の防災拠点となる県、市町村庁舎、警察署、消防署、学校などの避難所といった公共施設等へ、再エネ設備や蓄電池の導入を進めています。
グリーン・ニューディールの今後は
一方、欧州連合(EU)では、温室効果ガスの排出削減と経済成長を両立する政策として、欧州グリーン・ディールが進められていいます。
欧州グリーン・ディールの主要目標は、「2050年までの温室効果ガスの実質排出ゼロ」、「経済成長と資源の利用のでカップリング(切り離し)」、気候中立に向けて「誰も、その地域も取り残さない」ことの3点です。
日本企業がEU加盟国と取引する場合、欧州グリーン・ディールに沿った製品であることが求められるなど、欧州グリーン・ディールや、各国の規制に沿った取り組みが必要になります。
アメリカでグリーン・ニューディール政策が頓挫したものの、環境政策と経済政策に複合的に取り組む流れは、今後も世界中で進んでいくことは間違いありません。
企業が気候変動対策に取り組む第一歩として、再生可能エネルギーによる電力を使用する方法があります。エバーグリーンでは、電気に環境価値を保つ非化石証書を組み合わせることによって、実質的に再生可能エネルギーを提供する法人向けの「CO₂フリープラン」を提供しています。設備投資なども必要なく二酸化炭素の排出量削減を実現できます。詳しくはこちらをご覧ください。
(出典)
グリーン・ニューディールとは何か|国際環境経済研究所
https://ieei.or.jp/2019/02/special201608025/
https://www.congress.gov/bill/116th-congress/house-resolution/109/text
地域グリーン・ニューディール基金及び中核市・特例市グリーン・ニューディール基金|環境省
https://www.env.go.jp/policy/local-gnd/index.html
徳島県グリーン・ニューディール基金事業について|徳島県
https://www.pref.tokushima.lg.jp/ippannokata/kurashi/shizen/5007198
再生可能エネルギー等導入補助金事業(平成23年度グリーン・ニューディール基金)について|宮城県
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/saisei/h23gnd.html
詳しくはこちら。お気軽にお問合せください毎日使うなら、環境に優しい方がいい。豊かな緑を子供たちに残そう。
エバーグリーン・マーケティングとエバーグリーン・リテイリングは、エネルギー事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。