本記事では、賃貸物件の空室電気代を最小化するための実践的な方法を、運用テンプレートとKPI設計を交えて詳しく解説します。
現状のムダを洗い出す
空室電気代を最小化するには、まず現状のムダを洗い出すことが重要です。
解約漏れ/期ズレ/再請求手間
賃貸物件の管理において、以下のようなムダが発生しがちです。
解約漏れによる基本料金の発生
退去時に電気契約を解約し忘れると、空室期間中も基本料金が発生し続けます。10A契約の場合、月額約312円※の基本料金が発生します。3ヶ月間解約漏れが続いた場合、約936円※の無駄なコストが発生します。
※本記事における電力料金の比較・試算は、東京電力エナジーパートナー『従量電灯B』(2025年12月時点の公表料金、税込)を参照。詳細は公式サイト(https://www4.tepco.co.jp/ep/private/plan2/chargelist03.html)をご確認ください。936円は3ヶ月分(312円×3ヶ月)の計算です。
期ズレによる精算トラブル
電気契約の解約時期と実際の退去時期がずれると、期ズレが発生します。例えば、退去日が月末だった場合、翌月の基本料金が発生してしまいます。
再請求手間
解約漏れや期ズレが発生すると、後から精算する必要があります。精算作業には、以下の手間がかかります。
- 電力会社への問い合わせ
- 精算書の作成
- オーナー様への説明
- 再請求処理
これらの作業に、1件あたり約30分かかると仮定すると、10件で約5時間の工数が発生します。
現場での通電不備(内覧・工事)
空室期間中に、内覧や原状回復工事が発生することがあります。しかし、電気が止まっていると、以下のような問題が発生します。
内覧時の通電不備
新規入居希望者の内覧時、電気が使えないと物件の魅力が半減します。特に夜間の内覧では照明が必須ですが、電気が止まっていると内覧ができません。その結果、入居機会を逃す可能性があります。
原状回復工事での通電不備
退去後のクリーニングや修繕作業では、照明や電動工具を使用します。しかし、電気契約を解約してしまうと、工事当日に電気が使えず、作業が進まない事態が発生します。その結果、工事の延期や追加コストが発生する可能性があります。
手順化テンプレート
空室電気代を最小化するには、運用を手順化することが重要です。
申請→通電→検針→停止のチェックリスト
空室期間中の電気管理を標準化するため、以下のチェックリストを作成することを推奨します。
📊 図版:チェックリスト図
退去時のチェックリスト
- [ ] 入居者の退去日を確認
- [ ] 空室電気の通電を検討
- [ ] 管理画面から通電依頼を申請
- [ ] 通電日を設定(退去日の翌日以降)
- [ ] 通電確認
空室期間中のチェックリスト
- [ ] 月次で使用量を確認(代理店ポータルで閲覧)
- [ ] 異常な使用量がないか確認(使用量アラートやポータルで確認)
- [ ] 内覧や工事の予定を確認し、通電状態を維持
- [ ] 廃止日や通電日の設定状況をkintone※で確認(廃止日順ソート)
※kintone:サイボウズが提供する業務アプリケーション構築プラットフォーム。管理会社様が独自に構築した業務管理システムを指します。
入居確定時のチェックリスト
- [ ] 新規入居者の入居日を確認
- [ ] 空室電気の廃止日を決定(原則、廃止日=入居日当日)
- [ ] 管理画面から廃止依頼を申請(通電日は過去日の翌日で登録、廃止日は入居日当日)
- [ ] 廃止確認(代理店ポータル・kintoneで申請状況を確認)
空室でんきコンシェルは従量料金制のため、空室期間中にむやみに停止するメリットはありません。基本は通電を維持し、入居日が確定した段階で廃止日を入居当日に設定する運用が推奨されています。kintoneでは廃止日でソートすると申請漏れが可視化でき、代理店ポータルで通電・廃止の実績を確認できます。
アラートと二重承認
誤操作や不正を防ぐため、アラート機能と二重承認を設けることを推奨します。
アラート機能
- 使用量アラート:異常な使用量が検知された場合に通知(現状提供されている唯一のシステムアラート)
- 期限や未処理に関する通知は機能として提供されていないため、kintoneでの確認や内製チェックで補完
二重承認
重要な操作(通電・廃止)については、二重承認を設けることを推奨します。ただし、承認システムはKintoneにないため、内製チェックで補完していただく必要があります。
- 申請:担当者が管理画面から通電依頼を申請
- 一次承認:直属の上司が申請内容を確認し承認(社内で確認)
- 二次承認:管理者が申請内容を確認し承認(社内で確認)
- 実行:承認後、担当者が管理画面から通電処理を実行
このように、社内での二重承認を設けることで、誤操作や不正を防ぐことができます。
KPI設計
空室電気代を最小化するには、目標達成度を測る指標(KPI)を設定し、定期的に確認することが重要です。
※KPIとは、目標を達成するために重要な指標のことです。
kWh÷空室日数、再点依頼TAT
空室電気代を最小化するための指標(KPI)として、以下の指標を推奨します。
kWh÷空室日数
空室期間中の電気使用量を、空室日数で割った指標です。この指標を確認することで、無駄な電気使用を検知できます。
- 目標値:1日あたり0.1kWh以下
- 測定方法:代理店ポータルで使用量を確認し、月次で空室日数と合わせて記録
- 改善アクション:目標値を超えた場合、使用量の原因を調査
再点依頼TAT(ターンアラウンドタイム)
通電依頼から実際に通電が完了するまでの時間(TAT:ターンアラウンドタイム)です。TATとは、作業の開始から完了までの時間のことです。この指標を確認することで、運用効率を向上させることができます。
- 目標値:3営業日以内
- 測定方法:通電依頼日と通電完了日を記録(kintoneで履歴を管理)
- 改善アクション:目標値を超えた場合、プロセスを見直し
📊 図版:KPIダッシュボードのモック
改善サイクル(月次レビュー)
KPIを設定したら、定期的にレビューを行い、改善サイクルを回すことが重要です。
月次レビューの実施
毎月末に、以下の項目をレビューします。
- KPIの達成状況
- kWh÷空室日数の実績
- 再点依頼TATの実績
- 目標値との差異
- 課題の洗い出し
- 目標値を超えた原因の分析
- プロセスの改善点の特定
- 改善アクションの決定
- 次月の改善目標の設定
- 具体的な改善施策の決定
改善サイクルの継続
月次レビューで決定した改善アクションを実施し、次月のレビューで効果を検証します。レビュー時は代理店ポータルで取得した使用量データとkintone上の申請履歴を突合し、実績を確認します。このサイクルを継続することで、空室電気代を段階的に最小化できます。
実務での運用事例
運用事例を通じて、空室電気代の最小化方法を詳しく解説します。
事例1:解約漏れを防止したケース
ある管理会社では、退去時の電気契約解約を手作業で管理していたため、解約漏れが頻発していました。月に10件程度の解約漏れが発生し、1件あたり約936円(3ヶ月分の基本料金)の無駄なコストが発生していました。
改善策
空室でんきコンシェルを導入し、退去時のチェックリストを標準化しました。チェックリストには、以下の項目を追加しました。
- 退去日の確認
- 空室電気の通電依頼
- 通電日の設定
- 通電確認
効果
解約漏れが月10件から月0件に削減され、年間約10万円のコスト削減を実現しました。
事例2:通電不備を防止したケース
別の管理会社では、内覧や原状回復工事の際に電気が使えないトラブルが頻発していました。特に、週末の内覧時に電気が止まっていることが多く、入居機会を逃すケースが発生していました。
改善策
空室でんきコンシェルの管理画面から、内覧や工事の予定に合わせて通電・停止を操作する運用を標準化しました。通知機能がないため、内覧予定の一覧はkintoneで管理し、担当者が廃止日順にソートしてチェックする運用へ切り替えました。
効果
通電不備によるトラブルが月5件から月0件に削減され、入居機会の損失を防止できました。
事例3:KPI設計で継続的に改善したケース
ある管理会社では、空室電気代の削減を目指していましたが、効果を定量的に把握できていませんでした。
改善策
kWh÷空室日数と再点依頼TATをKPIとして設定し、月次でモニタリングを実施しました。目標値は、kWh÷空室日数が1日あたり0.1kWh以下、再点依頼TATが3営業日以内と設定しました。
効果
月次レビューを実施することで、無駄な電気使用を早期に発見し、段階的にコストを削減できました。導入から3ヶ月で、空室電気代を約30%削減しました。
よくある質問
空室電気代の最小化に関するよくある質問を整理します。
Q. チェックリストはどの程度詳細にすべきですか?
A. チェックリストは、担当者が迷わず操作できる程度に詳細にすべきです。ただし、過度に詳細にすると、運用が煩雑になるため、バランスが重要です。初めて操作する担当者でも理解できるレベルを目安にしてください。
Q. アラート機能はどの程度設定すべきですか?
A. システム提供のアラートは使用量アラートのみです。異常な使用量を早期に検知する目的で設定し、期限管理や未処理申請の確認はkintoneや社内チェックリストで補完してください。
Q. KPIの目標値はどのように設定すべきですか?
A. KPIの目標値は、現状の実績をベースに、段階的に設定すべきです。いきなり厳しい目標を設定すると、達成できずにモチベーションが低下する可能性があります。まずは現状の実績を把握し、10〜20%の改善を目標として設定してください。
まとめ
賃貸物件の空室電気代を最小化するには、以下の3つのポイントが重要です。
- 現状のムダを洗い出す:解約漏れや通電不備などのムダを特定
- 手順化テンプレートの作成:チェックリストと使用量アラート+kintone運用で標準化
- KPI設計と改善サイクル:kWh÷空室日数や再点依頼TATをモニタリングし、代理店ポータルで実績を確認しながら継続的に改善
空室でんきコンシェルを導入することで、基本料金0円によりコストを削減し、管理画面からの簡単操作で運用を効率化できます。
実務での運用事例からも、チェックリストの標準化、アラート機能の活用、KPI設計による継続的改善により、大幅なコスト削減が可能であることがわかります。
空室電気代の最小化でお悩みの管理会社様は、ぜひ空室でんきコンシェルの導入をご検討ください。
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