本記事では、空室電気代の経費処理について、会計科目(勘定科目)の選定から会計記録(仕訳)、証憑管理まで、実務で使えるテンプレートを交えて詳しく解説します。
勘定科目の考え方
空室電気代を経費として処理する際、まずどの会計科目(勘定科目)に分類するかを決める必要があります。会計科目とは、会社の収入や支出を分類するための項目のことです。
水道光熱費/共通費/共益費との整理
空室電気代は、以下の勘定科目で処理することが一般的です。
水道光熱費
空室電気代を「水道光熱費」として処理する場合、物件ごとに按分する必要があります。この方法は、物件ごとのコストを明確に把握したい場合に適しています。
共通費
複数物件に共通して発生する費用として「共通費」で処理する場合、物件ごとの按分は不要です。この方法は、物件ごとのコストを詳細に把握する必要がない場合に適しています。
共益費
入居者に請求する費用として「共益費」で処理する場合、入居者への再請求が必要です。この方法は、入居者に費用を転嫁したい場合に適しています。
推奨される勘定科目
空室電気代は、一般的に「水道光熱費」として処理することを推奨します。理由は以下の通りです。
- 物件ごとのコストを明確に把握できる
- 税務上の取り扱いが明確
- 会計基準に準拠している
按分基準(戸数/面積/使用量)
複数物件を管理している場合、空室電気代を物件ごとに割り振る(按分する)必要があります。按分とは、全体の費用を各物件に配分することです。按分基準としては、以下の3つが考えられます。
戸数按分
物件の戸数(部屋数)に応じて費用を割り振る方法です。この方法は、シンプルで計算が容易ですが、物件の大きさや使用量を考慮していません。
計算式:各物件の按分額 = 総額 × (各物件の戸数 ÷ 総戸数)
面積按分
物件の面積に応じて按分する方法です。この方法は、物件の大きさを考慮していますが、実際の使用量を考慮していません。
計算式:各物件の按分額 = 総額 × (各物件の面積 ÷ 総面積)
使用量按分
実際の使用量に応じて按分する方法です。この方法は、最も公平ですが、使用量の計測が必要です。
計算式:各物件の按分額 = 総額 × (各物件の使用量 ÷ 総使用量)
推奨される按分基準
空室電気代の按分基準としては、「戸数按分」を推奨します。理由は以下の通りです。
- 計算が容易でミスが少ない
- 空室期間中の使用量は少なく、按分基準による差異が小さい
- 実務で運用しやすい
仕訳パターン
空室電気代の会計記録(仕訳)は、請求書の形態によって異なります。仕訳とは、取引を会計帳簿に記録する作業のことです。
請求集約時の仕訳
空室でんきコンシェルでは、複数物件の請求書を1枚にまとめて送付します。この場合の会計記録(仕訳)は、以下の通りです。
仕訳例1:全額を水道光熱費で処理する場合
会計記録(仕訳)では、左側を借方、右側を貸方と呼びます。借方には費用や資産を、貸方には負債や収入を記録します。
(借方)水道光熱費 10,000円
(貸方)未払金 10,000円
この例では、水道光熱費10,000円を費用として記録し、未払金(まだ支払っていないお金)10,000円を負債として記録しています。
仕訳例2:物件ごとに按分する場合
物件ごとに費用を割り振る(按分する)場合の会計記録です。
(借方)水道光熱費(物件A) 3,000円
(借方)水道光熱費(物件B) 3,000円 (借方)水道光熱費(物件C) 4,000円 (貸方)未払金 10,000円
この例では、物件Aに3,000円、物件Bに3,000円、物件Cに4,000円を割り振っています。
仕訳例3:消費税を含む場合
消費税を含む場合の会計記録です。
(借方)水道光熱費 9,091円
(借方)仮払消費税 909円 (貸方)未払金 10,000円
この例では、水道光熱費9,091円(税抜)と仮払消費税909円(消費税額)を記録しています。
📊 図版:仕訳例テーブル

物件別按分の仕訳
物件ごとに按分する場合、按分計算表を作成し、それに基づいて仕訳を行います。
按分計算表の例
| 物件名 | 戸数 | 按分率 | 按分額 |
|---|---|---|---|
| 物件A | 30戸 | 30% | 3,000円 |
| 物件B | 30戸 | 30% | 3,000円 |
| 物件C | 40戸 | 40% | 4,000円 |
| 合計 | 100戸 | 100% | 10,000円 |
仕訳
(借方)水道光熱費(物件A) 3,000円
(借方)水道光熱費(物件B) 3,000円 (借方)水道光熱費(物件C) 4,000円 (貸方)未払金 10,000円
証憑と内部統制
空室電気代の経費処理において、証憑管理と内部統制は重要です。
1枚化の保存・承認フロー
空室でんきコンシェルでは、請求書を1枚にまとめて送付します。この場合の証憑管理は、以下の通りです。
証憑の保存
- 保存場所:経理部門で一元管理
- 保存期間:法定保存期間(7年)に準拠
- 保存方法:電子データまたは紙媒体で保存
承認フロー
- 請求書の受領:経理担当者が請求書を受領
- 内容確認:請求書の内容を確認
- 按分計算:物件ごとの按分計算を実施
- 一次承認:直属の上司が内容を確認し承認
- 二次承認:経理責任者が内容を確認し承認
- 仕訳処理:承認後、仕訳を処理
- 支払い処理:支払い期限に合わせて支払い
📊 図版:承認フローチャート

監査ログと改ざん防止
証憑の改ざんを防ぐため、監査ログを記録することが重要です。
監査ログの記録項目
- 操作日時:請求書の受領日時
- 操作者:請求書を処理した担当者
- 操作内容:按分計算、仕訳処理などの内容
- 承認者:承認を行った担当者
- 承認日時:承認を行った日時
改ざん防止の対策
- 電子データの保存:改ざんが困難な形式で保存
- 承認フローの厳格化:二重承認を設ける
- 定期的な監査:月次で監査ログを確認
実務での処理事例
実際の処理事例を通じて、空室電気代の経費処理方法を詳しく解説します。
事例1:請求書1枚化による効率化
ある管理会社では、100戸の物件を管理しており、各物件ごとに請求書が届いていました。毎月100枚の請求書を処理する必要があり、1件あたり5分かかると仮定すると、100件で約8時間の工数が発生していました。
改善策
空室でんきコンシェルを導入し、請求書を1枚にまとめて送付するようにしました。これにより、100枚の請求書を処理する必要がなくなり、1枚の処理で完結するようになりました。
効果
処理工数が約8時間から約30分に短縮され、約93%の時間削減を実現しました。さらに、請求書の紛失や処理漏れのリスクも大幅に減少しました。
事例2:按分計算の標準化
別の管理会社では、物件ごとに按分計算を行っていましたが、計算方法が統一されておらず、ミスが発生していました。
改善策
按分計算表を標準化し、戸数按分を基本とするルールを設けました。按分計算表には、物件名、戸数、按分率、按分額を記載し、計算式を明確にしました。
効果
按分計算のミスが月5件から月0件に削減され、精算トラブルを防止できました。
事例3:承認フローの標準化
ある管理会社では、請求書の承認フローが統一されておらず、承認漏れが発生していました。
改善策
承認フローを標準化し、二重承認を設けました。一次承認は直属の上司が、二次承認は経理責任者が行うようにしました。
効果
承認漏れが月3件から月0件に削減され、内部統制を強化できました。
よくある質問
空室電気代の経費処理に関するよくある質問を整理します。
Q. 按分基準はどのように選定すべきですか?
A. 按分基準は、計算が容易でミスが少ない「戸数按分」を推奨します。空室期間中の使用量は少なく、按分基準による差異が小さいため、実務で運用しやすい戸数按分が適しています。
Q. 請求書の保存期間はどのくらいですか?
A. 請求書の保存期間は、法定保存期間(7年)に準拠する必要があります。電子データまたは紙媒体で保存し、改ざんが困難な形式で保存することが重要です。
Q. 承認フローはどの程度厳格にすべきですか?
A. 承認フローは、内部統制を強化する程度に厳格にすべきです。ただし、過度に厳格にすると、処理が遅延する可能性があります。二重承認を基本とし、金額に応じて承認者を変更する方法を推奨します。
Q. 按分計算表はどのように作成すべきですか?
A. 按分計算表は、物件名、戸数、按分率、按分額を記載し、計算式を明確にすべきです。Excelやスプレッドシートを使用することで、計算を自動化できます。
まとめ
空室電気代の経費処理は、以下のポイントを押さえることで、効率的に処理できます。
勘定科目の選定
- 一般的には「水道光熱費」として処理
- 物件ごとに按分する場合は、「水道光熱費(物件名)」として処理
仕訳パターン
- 請求書1枚化により、仕訳処理が簡素化
- 物件ごとに按分する場合は、按分計算表を作成
証憑と内部統制
- 請求書1枚化により、証憑管理が簡素化
- 承認フローを設けることで、内部統制を強化
- 監査ログを記録することで、改ざんを防止
空室でんきコンシェルを導入することで、請求書1枚化により経理業務の負担を大幅に軽減できます。
実務での処理事例からも、請求書1枚化、按分計算の標準化、承認フローの標準化により、大幅な業務効率化が可能であることがわかります。
空室電気代の経費処理でお悩みの管理会社様は、ぜひ空室でんきコンシェルの導入をご検討ください。
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