グリーンメタノールとは
グリーンメタノールは、化石燃料を使用せずにつくられる環境に優しいメタノールです。
従来のメタノールは、石炭や天然ガスなどの化石燃料を原料に製造されるため、その生産過程でCO₂が排出されます。
一方、グリーンメタノールは、バイオマス(一般廃棄物や木のチップなど)や再生可能エネルギー由来の水素、さらには工場から排出されるCO₂を原料として製造されます。
そのため、グリーンメタノールの製造プロセスでは、CO₂を排出しないか、もしくは少量しか排出されません。
従来のメタノールと比べて温室効果ガスを大幅に削減できるため、産業分野における脱炭素化の切り札として注目が集まっています。
特に、近年では海運業界における船舶燃料としての需要が増加傾向にあります。
グリーンメタノールは海運業界の脱炭素化を握るカギ
地球温暖化が進行し続けるなか、さまざまな分野で脱炭素化が進められています。海運業界もその例外ではありません。
国際海運におけるCO₂排出量は、世界全体の約2.1%を占めます。一見すると少ないようにも思える数字ですが、これはドイツ一国分に匹敵する排出量です。
さらに、経済発展に伴って海上の貨物量が年平均3.5%で増加し続けているため、このまま対策を講じなければ、排出割合は2050年までに約7.0%にまで達すると懸念されています。
こうしたなか、国際海事機関(IMO)は、2050年頃までに温室効果ガスの排出をゼロにすることや、2030年までにゼロエミッション燃料などの使用割合を5%~10%まで引き上げるという排出削減目標を掲げました。
そこで注目されているのが、製造過程においてCO₂を排出しないグリーンメタノールです。
海運業界における炭素化の実現には、今後のグリーンメタノールの普及が重要なカギとなるでしょう。
グリーンメタノール市場の現状と成長予測|世界シェア1位は?
グリーンメタノール関連のプロジェクトは世界各地で実施されており、今後市場の急成長が期待されています。
株式会社グローバルインフォメーションの調査では、2024年のグリーンメタノール市場の規模は19億米ドル、2030年には111億米ドルにまで成長し、年間平均成長率は33.8%にのぼると予測されています。
メタノール市場全体の年間平均成長率が3.5%を超えるなか、グリーンメタノール市場はそれを大きく上回る勢いで成長すると見られています。このことは、環境への配慮や持続可能性への関心の高まりをあらわしていると言えるでしょう。
地域別では、アジア太平洋が1位の市場シェアを占めています。一方、北米市場も政府が従来の船舶燃料からグリーンメタノールへの転換を後押ししていることを背景に、今後大きな成長が見込まれると予測されます。
グリーンメタノール市場の主要企業には、OCI(オランダ)、Methanex Corporation(カナダ)、Enerkem(カナダ)、SunGas Renewables(アメリカ)などが名を連ねています。
グリーンメタノールを取り巻く海外の動向
海外では、海運業界におけるグリーンメタノール燃料の普及拡大に向けて、各社がさまざまな取り組みを実施しています。
ここでは、国際海運大手であるA.P.モラー・マースク社の取り組みと、スペインにおける大規模工場開発プロジェクトをご紹介します。
海運大手A.P.モラー・マースク社の取り組み
国際海運大手であるA.P.モラー・マースク社(以下、マースク社)は、世界各国の企業と連携しながら、グリーンメタノール燃料の利用推進に積極的に取り組んでいます。
2022年3月には、中国のガス機器製造会社やデンマークの再生可能エネルギー会社など大手6社と戦略的パートナーシップを締結しました。2025年末までに少なくとも年間73万トンのグリーンメタノールの調達を目指しています。
2023年11月には、中国の大手風力発電の子会社と、年間50万トンのグリーンメタノールの長期供給契約を結びました。この規模の契約は海運業界初として注目されています。
マースク社の取り組みは日本でも展開されています。2023年12月には、三菱ガス化学株式会社および横浜市と連携し、横浜港におけるグリーンメタノールのバンカリング(※)実現に向けて覚書を締結しました。
※バンカリング:船舶に燃料を供給すること
こうした大手海運企業の取り組みは、グリーンメタノール市場の成長にとって大きな推進力となっています。
ヨーロッパ最大のグリーンメタノール製造工場が開発予定
スペインの総合石油会社CEPSA(Compañía Española de Petróleos, S.A.U.)とグリーンメタノール開発の独立起業C2Xは、COP28(2023年11月~12月開催)において、ヨーロッパ最大規模のグリーンメタノール工場の開発プロジェクトを発表しました。
このプロジェクトは、スペインのウエルバに最大10億ユーロを投資し、年間30万トンの生産能力を持つ大規模なグリーンメタノール工場を開発します。
この工場では、化石燃料の使用に伴うCO₂排出量を最大100万トン削減できると見込まれており、業界から大きな注目を集めています。
日本企業におけるグリーンメタノール活用推進の取り組み
日本企業も、グリーンメタノールの利用拡大に向けて積極的な取り組みを展開しています。
ここでは、株式会社商船三井とJFEエンジニアリング株式会社の取り組みをご紹介します。
株式会社商船三井:Net Zero Voyageを実現
株式会社商船三井は2023年2月、カナダのMethanex Corporationと協業して、世界初となるグリーンメタノールを活用したNet Zero Voyageを実現しました。
アメリカからベルギーまでの18日間にわたる航海で、燃料のライフサイクルにわたる温室効果ガス排出量をネットゼロとすることに成功しています。
舶用燃料としてのグリーンメタノールの有用性を示すとともに、海運業界の脱炭素化への移行を後押しする画期的な取り組みとして大きな注目を集めました。
JFEエンジニアリング株式会社:ごみからグリーンメタノールを製造
2022年3月、JFEエンジニアリング株式会社は、清掃工場の排ガスからCO₂を回収し、メタノールへ転換することに国内で初めて成功したと発表しました。
この取り組みは、三菱ガス化学株式会社と共同で行った実証実験によるものです。ごみ処理とカーボンリサイクル(※)を組み合わせた革新的なアプローチとして注目されています。
ごみ処理の過程で発生するCO₂を、有用な化学製品であるメタノールに変換することで、循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現にも貢献する取り組みです。
※カーボンリサイクル:CO₂を回収し、さまざまな炭素化合物として再利用すること
個人レベルの脱炭素化対策としておすすめな「エコな電気」
2015年に採択されたパリ協定では地球温暖化を1.5℃までに抑えることが世界の共通目標として掲げられました。
各国はこの目標達成のために、あらゆる産業分野における脱炭素化を進めています。
しかし、地球温暖化を抑えるには、産業界だけが脱炭素化を目指せば良いわけではありません。私たち一人ひとりの暮らしの脱炭素化も重要です。
そこで、家庭における脱炭素化の取り組みとして注目してほしいのが、毎日使う「電気」です。
実は、家庭からのCO₂排出量の約半分は、電気の使用によるものです。
家庭で毎日使う電気をCO₂排出量ゼロのエコな電気に切り替えることで、大幅な脱炭素化につながります。
世界が脱炭素化を加速させている今、エコな電気への切り替えで暮らしの脱炭素化も進めましょう。
エバーグリーンのエコな電気で環境に優しい暮らしを
環境に優しいエコな電気に興味がある方は、ぜひ『エバーグリーン』をご検討ください。
エバーグリーンは、再生可能エネルギーのリーディングカンパニーである「イーレックスグループ」の一員です。
再生可能エネルギー100%で発電されたエコな電気をすべてのプランで提供しているため、エバーグリーンに切り替えるだけで、環境に配慮した暮らしを手軽に実現できます。
エバーグリーンに切り替えるメリットを詳しくご紹介します。
エバーグリーンのエコな電気ならCO₂排出量がゼロに
エバーグリーンのエコな電気に切り替えることで、ご家庭の電気使用によるCO₂排出量をゼロにできます。
ファミリー世帯の場合、エバーグリーンへの切り替えによって、月間148kgのCO₂を削減できます。これは、杉の木11本分の植林効果に相当する削減量です。
※CO₂排出量は令和3年度全国平均係数(0.434kg-CO₂/kWh)をもとに計算
※植林効果は「森林の二酸化炭素吸収力」(関東森林管理局/林野庁)をもとに、杉の木1本当たりの年間CO₂吸収量を14kgとして計算
近年では環境意識の高まりから、エコな電気を選ぶ方が増えています。
エバーグリーンのこれまでの契約実績は18万件、CO₂削減量は累計1,310万kgに達しています。これは、94万本分の植林効果に匹敵する大きな成果です。
※契約件数は2024年3月末時点における当社全プランの累計
※CO₂削減量および植林効果は、これまでの個人のお客さまご契約による累計
エバーグリーンはエコな電気の提供を通じて、暮らしの脱炭素化を後押しします。ぜひこの機会にエバーグリーンのエコな電気への切り替えをご検討ください。
ユニークなプランや便利な各種サービスも
エバーグリーンでは、シンプルな通常プランのほかにも、下記のようなユニークでおトクなプランを提供しています。
【エバーグリーンのユニークなプラン】
また、電気とセットでおトクになるサービスや、電気に安心&便利をプラスする各種サービスも充実しています。
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エバーグリーンへの切り替え申し込みは、Webから5分ほどで手間なく完了します。この機会にぜひエバーグリーンに切り替えて、暮らしの脱炭素化を進めましょう。
家庭でもエコな取り組みを実践しよう
グリーンメタノールは海運業界における脱炭素化のカギを握る燃料として注目されています。
こうした脱炭素社会の実現に向けた取り組みは、今後さまざまな産業分野でさらに推進されることが予想されます。
地球温暖化の進行を抑えるには、産業界だけでなく、私たち一人ひとりの暮らしにおける脱炭素化も重要です。
まずは毎日使う電気をエコなものに切り替えて、環境に優しい暮らしを始めてみましょう。
(出典)
- 経済産業省資源エネルギー庁|e-メタノールの導入可能性について
- DBJ Research|カーボンニュートラルに向けたメタノールへの期待~有力拠点としての新潟の強み~
- 経済産業省資源エネルギー庁|eメタノールの導入促進に関する方向性の整理
- 経済産業省|サウジアラビア王国・CO2 to Chemical生成事業実施可能性調査事業
- 経済産業省|GX実現に向けた投資促進策を具体化する「分野別投資戦略」を取りまとめました 関連資料:分野別投資戦略 参考資料(船舶)
- 経済産業省|「次世代船舶の開発」プロジェクト 海運のカーボンニュートラルを取り巻く動きと追加研究開発について
- IMO|2023 IMO Strategy on Reduction of GHG Emissions from Ships
- 国土交通省|国際海運からのGHG削減のための新たなルールの合意に向けた交渉が継続~国際海事機関 第82回海洋環境保護委員会(9/30~10/4)の開催結果~
- 株式会社グローバルインフォメーション|メタノール- 市場シェア分析、産業動向・統計、成長予測(2024年~2029年)
- 株式会社グローバルインフォメーション|グリーンメタノールの世界市場:原料別、誘導体別、用途別、地域別 – 2030年までの予測
- POLARIS MARKET RESEARCH|Green Methanol Market Size, Share, Trends, Industry Analysis Report: By Feedstock (Biomass, Carbon Capture & Storage, and Green Hydrogen), Derivatives, Application, and Region (North America, Europe, Asia Pacific, Latin America, and Middle East & Africa) – Market Forecast, 2024 – 2032
- Global Market Insights|Green Methanol Market – by Feedstock (CO2 Emissions, Municipal Solid Waste, Agricultural Waste, Forestry Residues, Others), Type (E-Methanol, Bio Methanol), Application (Fuel Grade, Chemical Feedstock, Others) & Forecast, 2024 – 2032
- A.P. Moller – Maersk|A.P. Moller – Maersk engages in strategic partnerships across the globe to scale green methanol production by 2025
- 東洋経済ONLINE|中国企業が「グリーンメタノール」の大型契約獲得
- 横浜市|日本初︕横浜港におけるグリーンメタノールの利用促進に向けて覚書を締結しました
- CEPSA|Cepsa and C2X set up joint project to develop the largest green methanol plant in Europe
- 外務省|国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)結果概要
- C2X|C2X and Cepsa announce green methanol project ambition in Spain
- 株式会社商船三井|世界初、Methanexと商船三井がバイオメタノール燃料を用いたNet Zero Voyageを実施
- JFEエンジニアリング株式会社|日本初!ごみからメタノールの製造に成功~国内清掃工場から排出されるCO₂を化学製品原料に転換~
- 経済産業省資源エネルギー庁|カーボンリサイクルについて
- 環境省|令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書
- 国立研究開発法人国立環境研究所|日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2022年度)(確報値)