【ポイント解説】省エネ法をはじめとする改正案が閣議決定。企業にはどんな影響があるのか?

2022年06月27日

2022年3月1日、「安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。改正の背景、改正される法律、内容、実際に改正案が施行された場合の企業への影響をポイントで分かりやすく解説します。

【目次】

改正の背景と改正される法律


■改正の背景


■改正される法律

・省エネ法
・エネルギー供給構造高度化法
・JOGMEC法
・鉱業法
・電気事業法

改正のポイント

① 需要構造の転換(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)
② 供給構造の転換(高度化法・JOGMEC法・鉱業法)
③ 安定的なエネルギー供給の確保(電気事業法)

企業・事業者への影響


まとめ

改正の背景と改正される法律


■改正の背景

今回、安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案が閣議決定された背景には、2021年10月に閣議決定した第6次エネルギー基本計画を踏まえた、「2050年カーボンニュートラル」や2030年度の野心的な温室効果ガス削減目標などの中長期目標の達成があります。
こうした目標を達成するためには、日本のエネルギー需給構造の転換を促進と安定的なエネルギー供給を確保するための制度整備が必要です。

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こうした背景のもと、改正が閣議決定されたのは、下記5つの法律です。

・省エネ法
・エネルギー供給構造高度化法
・JOGMEC法
・鉱業法
・電気事業法

改正内容の前に、先ずはそれぞれの法律が制定された経緯と目的について見ていきましょう。

■改正される法律

1つ目が省エネ法です。

省エネ法は1979年に制定された工場や貨物/旅客輸送事業者、荷主などを対象に、エネルギーを効率的に利用していくことを目的とした法律です。制定以来、経済成長やビジネスモデルの変化など、社会の変化に応じて改正を繰り返しており、現在は2018年6月に成立した改正省エネ法のもとで運用されています。

省エネ法について詳しくはこちら

2つ目が、エネルギー供給構造高度化法(以下高度化法)です。

高度化法は、2009年7月に成立したエネルギー供給事業者に対して、非化石エネルギー源の利用を拡大するとともに、化石エネルギー原料の有効利用の促進を目的とした法律です。
日本のエネルギー供給のうち、8割以上を占める石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料は、その殆どを海外に依存しています。一方で世界的なエネルギー需要の増大、化石燃料の市場価格の乱高下など、エネルギー市場が不安定化しています。そんな中、化石燃料の使用によって発生する温室効果ガスの削減も重要な課題となっています。
こうした背景から、エネルギーの安定供給と温室効果ガスの削減を実現すべく、化石燃料と比べて持続可能性が高く、環境への負荷も少ない再生可能エネルギー(再エネ)を含む非化石エネルギー源の導入促進と、化石燃料の有効利用を目的とした高度化法が誕生しました。

3つ目が、JOGMEC法です。

JOGMEC法とは、国産資源の少ない日本において、安定的にエネルギー確保ができるよう、海外における資源開発を担う独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)について、その役割や事業内容を定めた法律です。
具体的には、地震や災害などの有事に、民間企業による燃料の調達が困難な場合、経済産業大臣の要請のもと、JOGMECが代わりに調達したり、海外におけるLNGの積替基地・貯蔵基地、金属鉱物の採掘・製錬事業に必要な資金について、JOGMECが出資を行うなどが挙げられます。

4つ目が鉱業法です。

鉱業法とはその名の通り鉱業権に関わる権利の設定、内容、作業の対象区域などについて定めた法律です。現在は、他国の資源政策に影響されない国内資源を国が適正に維持・管理し、適切な主体による合理的な資源開発を行うことを目的として、2012年1月に改正された改正鉱業法のもとで運用されています。
具体的には、鉱業権を取得する者の認可基準や、鉱業権設定等に係る特定区域制度などの手続き、鉱物の探査に係る許可制度などがあります。

最後が電気事業法です。

電気事業法とは、電気の使用者の利益の保護、電気事業の健全な発達、公共の安全、環境保全を図ることを目的に、電気事業の運営を適正化し、電気工作物の工事、維持及び運用を規制する法律です。1964年に制定されて以降、9度に渡り改正が重ねられ、現在は2017年、2018年に改正された改正電気事業法をもとに運用されています。具体的には、競争活性化等に向けた市場・ルールを整備するため、連系線利用ルールの見直しやJEPXにおける間接送電権(市場参加者が卸電力取引に伴って値差清算を受ける権利)の発行やベースロード市場、容量市場、非化石取引市場などが創設され、新規参入者が市場に進出しやすい環境や再エネ主力電源化に向けた調整力の確保、小売電気事業者の非化石電源調達目標の達成を後押しする仕組みが形成されています。

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改正のポイント


前項で述べた改正の背景を踏まえ、2022年3月1日に先に述べた5つの法律が改正されます。改正にあたっては、省エネの対象範囲の見直しや非化石エネルギーへの転換促進、脱炭素燃料や技術支援の強化、電源休廃止時の事前届出制の導入や蓄電池の発電事業への位置づけ等の措置を講ずるとしています。

今回は、その改正の内容を
① 需要構造の転換
② 供給構造の転換
③ 安定的なエネルギー供給の確保
の3つのポイントに分けて見ていきましょう。

①需要構造の転換(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)

需要構造の転換では、エネルギーの定義の見直しと非化石エネルギーへの転換の促進、デマンドレスポンス等の電気の需要の最適化を進めるとしています。

具体的には、今まで化石エネルギーの使用だけが対象となっていた省エネ法の「エネルギー」の定義を見直し、対象を非化石エネルギーの使用を含む全てのエネルギーに拡大します。
また、多くのエネルギーを消費する事業者に対しては、非化石エネルギーへの転換に関する中長期計画の作成や、非化石エネルギーの使用状況の定期報告等を求めます。

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加えてデマンドレスポンス等で電気の需要を最適化するため、再エネ出力制御時の電気需要量の増加や、需給ひっ迫時の電気需要量の抑制など電気の需給状況に応じた需要のシフトを促すとともに、電気事業者に対して、電気需要最適化に資する取組を促すための電気料金等の整備を求めます。

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②供給構造の転換(高度化法・JOGMEC法・鉱業法)

供給構造の転換では、再エネの導入促進、水素・アンモニア等の脱炭素燃料の利用促進、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素を回収・貯蔵すること)の利用促進、レアアース・レアメタル等の権益確保を進めるとしています。

具体的には、従来LNGなどの化石燃料資源の確保に主眼を置いていたJOGMECの業務に洋上風力発電のための地質構造調査の追加や、大規模地熱発電等の探査事業※、CCS事業及びそのための地層探査、国内におけるレアメタル等の選鉱・製錬などへの出資・調査業務が追加されます。
また、水素・アンモニアを高度化法上の非化石エネルギーと定義し、火力発電についてもCCSを備えたものは高度化法上の促進対象として位置付けられ、その利用を促進します。


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※JOGMECによる海外の大規模地熱発電等の探査事業には経済産業大臣の認可が必要

③安定的なエネルギー供給の確保(電気事業法)

安定的なエネルギー供給の確保については、発電所の休廃止について、「事後届出制」を「事前届出制」に改め、発電所の休廃止について事前に把握・管理し、必要な供給力確保にかかる時間を確保するとし、脱炭素化に向けた供給力・調整力として期待される「大型蓄電池」を電気事業法上の「発電事業」に位置付け、電力システムの柔軟性を向上させ、系統への接続環境を整備するとしています。

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企業・事業者への影響


省エネ法をはじめとする改正案が実際に施行された場合、企業や事業者にはどんな影響があるのでしょうか。
まずは、水素やアンモニアなど今まで位置付けが不明瞭だったエネルギー源が非化石エネルギーとして位置付けられたことで、ますます非化石エネルギーの需要増加が予測されます。水素事業やその他再エネ事業を行っている企業や事業者は、ビジネスチャンスの拡大に繋がる可能性があります。
一方で、電気事業者やエネルギー消費の多い事業者は、非化石エネルギーへの転換に関する中長期計画の作成・報告、電気需要最適化に資する取組を促すための電気料金等の整備などが求められるため、規制に合わせた設備投資や細かい確認作業の発生によって生産効率の低下に繋がる恐れがあります。まずは自社が対象となり得るのか、対象となった場合に必要な手続きや取組について、事前に情報を収集し、対応できるようにしておくことが重要です。

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まとめ


いかがでしたでしょうか。今回の改正は、脱炭素社会の実現に向けた取組を促すことが主な目的となっています。今後の動向を見つつ、いざという時にすぐに対応できるよう、興味のある方は是非詳しく調べてみてください。

(出典)
ニュースリリース|経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220301002/20220301002.html
安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案の概要|経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220301002/20220301002-1.pdf
2020年度版電気事業法の解説|経済産業省
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/shiryo_joho/data/2020.pdf
エネルギー供給構造の高度化について -バイオ燃料政策について-|経済産業省
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/koudokahou/
鉱業法に基づく制度等のご案内|経済産業省
https://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/strategy/mining_act/
改正鉱業法の概要|四国経済産業局
https://www.shikoku.meti.go.jp/03_sesakudocs/0506_kougyou/kogyoho_kaisei/04gaiyo.pdf

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