快適な室内環境とエネルギー消費量実質ゼロを実現するZEBとは?

2022年10月27日

ZEB(ゼブ)と呼ばれる建物をご存じでしょうか。
リモートワークや働き方改革の影響で、建物の中で働く人や居住する人にとっての「空間の質」が重要視される昨今、人々の快適な暮らしと環境配慮を両立するZEBが注目されています。ZEBとは何か、ZEB導入のメリット、導入事例などについて分かりやすく解説します。

【目次】

ZEBとは

ZEBが広がる背景

ZEBのメリット

知っておくと便利な制度・事例


■ZEBプランナー制度

■ZEBリーディング・オーナー制度

■平成28年度環境省補助事業「業務用ビル等における省CO2促進事業」におけるZEBの導入事例


まとめ

ZEBとは


ZEBとは、正式名称を「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」といい、通称「ゼブ」と言われます。ZEBとは、快適な室内環境を実現しつつ、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指す建物のことです。

人が生活を営む以上、エネルギー消費量を完全にゼロにすることはできませんが、従来の建物で必要とされたエネルギーを省エネによって消費量を減らしながら、創エネによってエネルギーをつくることで、エネルギー消費量を実質ゼロにすることができます。

スライド1.JPGここでいう省エネは、「パッシブ技術」と「アクティブ技術」に分けられます。パッシブ技術とは建物内の環境を適切に維持するためにエネルギー需要を減らすための技術で、例えば「外皮性能向上」「昼光利用」「日射遮蔽」などです。一方、「アクティブ技術」はエネルギーを効率的に利用するための技術で、例えば「高効率照明」「高効率空調」などです。
パッシブ技術によってエネルギーの需要を減らし、どうしても必要となる需要についてはアクティブ技術によって無駄なくエネルギーを使用し、そのエネルギーを太陽光発電などといった創エネ技術によって補うことでZEBを実現することができます。

スライド2.JPGZEBには、ZEBを見据えた先進建築物として、高効率な省エネ設備等を備えた「ZEB Ready」、ZEB Readyの要件を満たしつつ、再エネによる年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づけた「Nearly ZEB」、ZEB Readyを見据えた建築物として、更なる省エネの実現に向けた措置を講じた「ZEB Oriented」等、様々な種類があります。

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ZEBが広がる背景


日本は、2020年10月に2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。2021年5月には地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律が成立し、2050年までのカーボンニュートラルの実現が基本理念として規定されるなど、カーボンニュートラル実現に向けて各所具体的な取組が求められています。

業務部門(事務所ビル、商業施設などの建物)も例外ではありません。
業務部門からのCO2排出量は、2019年度時点で日本全体の約2割を占めています。
他部門と比較して業務部門の増加は顕著であることから、建物の徹底的な省エネと再エネの活用によるCO2削減は重要な課題と言えます。

この課題に対して、政府実行計画※も改正され、その中で、政府の施設については「今後予定する新築事業については原則ZEB Oriented相当以上としつつ、2030年度までに新築建築物の平均でZEB Ready相当となることを目指す」としており、地方公共団体においても、政府実行計画の趣旨を踏まえた取組が積極的に行われることが期待されています。

スライド4.JPG(出典:ゼブ・ポータル|環境省)

※政府実行計画:政府がその実務及び事業に関し温室効果ガスの排出の削減等のため実行すべき措置について定められる計画

もっと詳しく
2050年に日本が目指すカーボンニュートラルとは?
https://www.egmkt.co.jp/column/corporation/20210625_36.html
【2021年5月成立】何が変わった?改正温対法3つのポイント
https://www.egmkt.co.jp/column/corporation/20210716_37.html

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ZEBのメリット


ZEBとは何か、ZEBが広がる背景についてお伝えしましたが、実際ZEBにはそれぞれのステークホルダーに以下のようなメリットがあります。

①光熱費の削減
②不動産価値の向上
③事業継続性の向上
④快適性・生産性の向上

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

■光熱費の削減

ZEBのパッシブ技術によって、エネルギー消費量を削減する事で、建物の運用に係る光熱費用の削減ができます。
例えば、公共建築物や自社ビルなど、テナント専有部が存在しない(または小さい)建物の場合、光熱費の削減分の多くは、オーナーのメリットになります。

また、テナントビルの場合は、共用部の光熱費削減分がオーナーのメリット、テナント専有部の光熱費削減分がテナントのメリットになることが想定されます。

■不動産価値の向上

近年のSDGsやESG投資といった企業の環境に配慮した取組を基に評価や投資判断を行う潮流は、業務部門にも浸透しつつあります。
ザイマックス不動産総合研究所によると、環境認証を取得している物件はそうでない物件に比べて平均賃料が4.4%高いという調査結果も出ています。つまり 建物のオーナーにとっては、賃料収入の増加によって、初期投資費用を回収しやすくなるほか、テナントにとっては、環境に配慮したビルに入居することで、自社の企業価値向上にも繋がります。

建築物の環境性能を評価する認証制度としては、CASBEEやLEED、BELSといったものが存在します。また、CDPやGRESB等、企業の活動を共通の尺度で評価する仕組みもあります。ZEBのようなエネルギー性能と環境配慮を備えた建物は、こうした認証制度で高い評価を取得しやすくなり、認証されることで、ESG投資で企業の評価が株価などの企業価値に反映されるように、新規成約や賃料、企業全体の評価においてプラスに繋がります。

関連コラム
不動産業界のサステイナビリティ指標「GRESB」とは?
https://www.egmkt.co.jp/column/corporation/20210930_40.html
不動産のESG投資に活用できる「グリーンビルディング認証」とは?
https://www.egmkt.co.jp/column/corporation/20210930_41.html

■事業継続性の向上

ZEBの実現によって、エネルギーを効率的に消費できるようになるため、災害などの非常時においても一定のエネルギーを確保することができ、事業の継続性が保たれます。更に、再エネなどの活用により一部エネルギーの自立を図ることができれば、必要最低限の機能を維持できるエネルギーが確保でき、地域の防災拠点や企業の事業活動などにも寄与できます。

■快適性・生産性の向上

建物の価値には、人によって様々な意見があります。例えば駅からの近さや築年数、交通量など生活環境や居住目的などによっても違うでしょう。
そんな中、近年こうした従来の建物の価値に加えて、働き方改革やリモートワークの浸透も相まって、健康や快適性など建物の中で働く人や居住する人にとっての「空間の質」が特に重視される傾向にあります。実際、このような空間の質の向上による健康・快適性、知的生産性の向上効果を定量化し、メリットを金額換算するような研究もされており、その効果は光熱費の削減よりも大きいと言われています。
例えばオーナーがZEB等、健康、快適性、知的生産性の高いビルを提供することで、そこに入るテナントには社員の意欲・作業効率向上、人材の確保に繋がりやすくなるメリットがあります。その結果、テナント確保、空室率低下を回避するために質の向上を図るオーナーが増加し、オーナーとテナント双方にとっての好循環が生まれるきっかけにもなります。

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知っておくと便利な制度・事例


全国には、ZEBの知見を活用して、一般に向けてZEB実現のための相談窓口を有する事業者や、自らのZEB普及目標や導入計画、実績などを一般に公表する事業者が存在します。ここでは、ZEBに関する2つの制度と平成28年度環境省補助事業「業務用ビル等における省CO2促進事業」におけるZEBの導入事例をいくつか紹介します。

■ZEBプランナー制度

ZEBプランナーとは、「ZEB設計ガイドライン」や「ZEB省エネ建築物を設計するための技術や設計知見」を活用して、ZEB実現のための一般に向けた相談窓口となり、建築設計、設備設計、省エネ設計、コンサルティング等様々な業務設計を行い、かつその活動を公表する事業者を指します。
環境省及び経済産業省が実施しているZEBの補助事業については、ZEBプランナーの関与が必須となっており、ZEBプランナーはこうしたZEBの導入を検討しているオーナーに対してZEB実現に向けたプランニングを実施します。
ZEBプランナーになることにより、「ZEBプランナー・マーク」の使用が可能となり、これはZEBプランナーがZEBの普及促進に関わる活動を行う際に使用できます。

■ZEBリーディング・オーナー制度

ZEBリーディング・オーナーとは、ZEB Ready以上の性能を有する建築物を所有(もしくは計画を保有)する建築オーナーを指し、自らのZEB普及目標や導入計画、導入実績を一般に公開しています。建物のオーナーがZEBリーディング・オーナーの登録を受けると、「ZEBリーディング・オーナー・マーク」を取得でき、ZEBリーディング・オーナーが、ZEBの普及促進活動を行う際に使用できます。

■平成28年度環境省補助事業「業務用ビル等における省CO2促進事業」におけるZEBの導入事例


1) 四国銀行潮江支店

四国銀行潮江支店では、断熱等による外皮性能の向上や高効率省エネ機器の導入により、省エネ率52%を実現しました。また、太陽光発電による創エネを考慮した場合の省エネ率は65%となり、ZEB Readyを達成する見込みです。

2) 藤崎建設工業本社ビル
藤崎建設工業本社ビルでは、断熱等による外皮性能の向上、井水利用空調設備、太陽熱給油設備等の導入により、省エネ率51%を実現しました。また、太陽光発電による創エネを考慮した場合の省エネ率は107%となり、ZEBを達成する見込みです。

3) 柏崎海洋センター
新潟県柏崎市によって設置された柏崎海洋センターは、2016年度に採択した中で唯一、改築によってZEBを導入した事例です。高効率機器、高COP型ヒートポンプ、ペレットストーブ等の導入により、省エネ率51%を実現し、ZEB Readyを達成する見込みです。

平成28年度環境省補助事業「業務用ビル等における省CO2促進事業」におけるZEBの導入事例の詳細はこちら

まとめ


いかがでしたでしょうか。
ZEBの導入によって、カーボンニュートラルや再エネ活用に貢献できるだけでなく、オーナー、テナント、居住者などそれぞれの立場にとって良いメリットが得られます。
環境省が運営する「ZEB PORTAL[ゼブ・ポータル]」はZEBの専門ポータルサイトで、より詳しい情報が掲載されていますので、興味のある方は是非確認してみてください。

ZEB PORTAL[ゼブ・ポータル]|環境省

(出典)
「ZEBの定義」ZEB PORTAL|環境省
https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html
「ZEBを実現するための技術」ZEB PORTAL|環境省
https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/06.html
「用語集」ZEB PORTAL|環境省
https://www.env.go.jp/earth/zeb/terms/index.html?id=term_01
「ZEB化の必要性と普及目標・ロードマップ」ZEB PORTAL|環境省
https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/02.html
「ZEBとは?」ZEB PORTAL|環境省
https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/02.html
「ZEB化のメリット」ZEB PORTAL|環境省
https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/03.html
ZEBの事例を知りたい!」ZEB PORTAL|環境省
https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/08.html
報道発表資料|環境省
https://www.env.go.jp/press/103957.html
不動産のESG投資~GRESB調査と環境不動産の展望~|CSRデザイン環境投資顧問㈱
https://www.rief-jp.org/wp-content/uploads/201511horielecture45f21c740f324c4087f593244bd88c73.pdf

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